店舗デザインの基礎知識を年間300件をこなすプロが教えます!

店舗デザインの依頼を考えているあなたへ。店舗が完成するまでの期間や流れ、費用といった店舗デザインの正しい知識を持っていますか?出店の際に損をしないために、実際の事例をもとに、今学んでおくべき情報をまとめてお届けします。

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飲食店のイラスト

1.そもそも店舗デザインとはどういうもの?

飲食店のイラスト

これから店舗デザインを考えている人でも、実際にどういうものを作りたいのか具体的にイメージできていない人も多いでしょう。まずは店舗デザインとはどういうものなのか、その全体像を知っておきましょう。

1-1 店舗デザインとは?

一般的に店舗デザインと呼ばれるものは、店舗の設計を意味します。店舗をデザインするデザイナーは、壁の色や店内の雰囲気、什器(じゅうき:店舗やショールームなどで商品を陳列するための家具)などを考えデザインします。それだけでなく店舗の広さを計算した上で家具の配置やレイアウトを決めたり、それを図面に落とし込みんだりもします。これが設計という作業です。

店舗をつくる工程においては、設計=デザイン、設計士=デザイナーと考えて良いでしょう。

1-2 店舗はデザイン設計だけでは作れない

もちろん図面ができただけでは店舗は完成しません。今度はその図面を元に実際に工事する作業が必要です。このプロセスを施工といいます。ここまで来ると主に作業を行なうのは施工会社で、図面を書いたデザイナーは基本的には関与しなくなります。

この内装工事が開始されることを着工といい、その工事が完了することを竣工(しゅんこう)といいます。

他の多くの業種と同様、店舗を造る際にもまずはどのようなものを作るかという設計図があり、そしてそれを元に造る作業に入っていくのです。

1-3 どこからどこまでを店舗デザインと呼ぶのか?

狭義での店舗デザインは実際に内装がどのような雰囲気かを考えデザインし、図面に落としこむデザイナーの作業を店舗デザインと呼びます。

しかしそれだけでは店舗は完成しないため、広義の店舗デザインは工事までを含んでしまってもいいかもしれません。

2. 店舗をデザインするデザイン事務所とは?

デザイナーのデスク

実際に店舗デザインを依頼する際は、設計士と何度もやりとりをすることになります。

そのためデザイン設計事務所がどのような仕事をしているのか、もう少し詳しく知っておくといいでしょう。

2-1 店舗のデザインをするのは設計事務所

内装の設計を行なうのが設計事務所です。この設計事務所に所属しているデザイナー・設計士が内装のデザインや図面を作ります。図面を元に工事を行なう工程に入った際に、施工会社の出番となるのです。また設計と施工を同じ会社内で行なう、「設計施工」と呼ばれる事務所もあります。

2-2 デザイン設計事務所にも種類はさまざま

一重にデザイン設計事務所といっても事務所によってその特徴は異なります。

住宅のデザイン設計をやっている事務所、商業施設のデザイン設計を行っている事務所、そしてそのどちらもやっている事務所など、デザインの対象もさまざまです。数人で全てを行っている設計事務所もあれば、多くの設計士を抱えている事務所もあります。

特定の業種(飲食・アパレル・サロン・クリニック等)に強く、その業種だけを行っている事務所もあります。また設計事務所の中には店舗のデザイン設計を行なうだけでなく、店舗のロゴやパッケージデザインまで総合的に店舗のプロデュースを手がける事務所も珍しくありません。

2-3 設計士は建築家とは違うの?

設計士と建築家の違いはゼロから建物を建てられるか否かです。

一級建築士などの建築士の資格は、ゼロから建物を建てる場合に必要となる資格です。店舗デザインなどのすでにある建物の内装の設計を行なう際には、必要な資格は特にありません。そのため建築事務所が内装デザインを行なうこともありますが、逆にデザイン事務所がゼロから建物を建てることはほとんどありません。

3. 店舗デザインの流れ(店舗ができるまでのスケジュール)

プランを書く人

次に店舗が実際にできあがるまでのプロセスと実際にかかる期間を確認しておきましょう。いつどこでどのような情報が必要か、完成までにどれくらいの期間がかかるのかを理解しておくことで、店舗完成までの道のりをスムーズに進めることができるでしょう。

3-1 施主とデザイナーとの打ち合わせ

まずはお客様とデザイン会社の間での打ち合わせです。どのような店舗を作りたいかといったコンセプト、予算はいくらかなど、施主の要望やデザイナーに共有にします。
あらかじめ理想に近い店舗デザインのイメージを集めデザイン会社に見せながら話すと、話が早く進みかつ共通認識がとりやすくなります。
SHELFYでも事例を多く掲載していますので、参考にご利用ください。
>>店舗デザイン事例の参考

3-2 スケッチ・パースのご提案

打ち合わせした内容を元に、1~2週間ほどでデザイナーが完成予想図のスケッチや、パースと呼ばれる3D作成ソフトによる店舗のデザインを提案します。この後、必要であれば何度か提案を行い、施主が思い描いているイメージとデザイナーの提案をすりあわせます。予算の関係からどうしても断念せざるをえない点も出てくるかもしれません。

また複数のデザイン事務所に依頼をして、デザインを比較することを「デザインコンペ」といいます。簡単な店舗のイメージの提案をスケッチやパースに起こしてもらいます。無料でおこなうデザイン事務所が多いですが、コンペフィーと呼ばれるスケッチやパースの代金は支払うべきだとされています。それがあるだけで「良いクライアント」という意識を持ってもらうことができ、提出されるスケッチやパースの品質向上、さらには店舗のデザインの完成度まで向上することがあるからです。提案された案を比較し、気に入ったデザイン事務所と設計契約を結びましょう。

参考比較して決める!店舗デザインにおけるデザインコンペとは

3-3 デザイン設計の詳細を決める

施主との話し合いを元に決定したデザインの具体的な設計に入ります。ここでやっと店舗の設計図ができあがります。デザイナーは予算内でどのような素材を使うか、どの部分を削るかなど、詳細まで落とし込みます。

3-4 施工会社選定

施工会社はデザインを依頼したデザイン会社が紹介してくれるケースが多いでしょう。ただし、自分で探すことももちろん可能です。候補に上がった2~3社の施工会社に「この店舗をいくらで作れるか」という見積りをもらい、それらを比較します。これを相見積もり(あいみつもり)といいます。各社から見積りが出てくるのに最低でも1~2週間はかかります。また見積書は専門的な要素が多く、施主が金額だけを見て選ぶと「安かろう、悪かろう」になりがちです。そうならないためにも、デザイナーなどの専門家とよく相談しながら選ぶことが大切です。

3-5 着工

依頼する施工会社が決まったら、いよいよ工事が始まります。店舗の内装工事には電気・排水・左官・家具、といった様々な業者や職人さんたちが関わります。施工会社がこれらの関係者をとりまとめ、予定通りに工事を進めるために全体の指揮をとります。

3-6 竣工・引渡し

工事が終了し店舗がオープンできる状態になったら、水道・ガス・電気といった設備面や什器の使い勝手など、お店の営業に必要なもの全てに問題がないことを確認し、施主がサインをして、引渡しとなります。

4. 店舗デザインにかかる費用

書類の上のコインとペン

それでは店舗デザインを依頼するには実際にどれくらいの費用が必要となるのでしょうか。予算と実際にかかる費用に大きな差が生まれないよう、店舗デザインにはどれくらいの費用がかかるのか知っておきましょう。

4-1 何にお金がかかるのか

デザイン事務所へ支払うお金

デザイン事務所に払うお金は、店舗の設計・デザイン料の他に設計監理費というものがあります。これは店舗が作成した図面通りに店舗が造られているかどうかを監理するための費用です。

施工会社へ支払うお金

施工会社へ支払うお金は大きく設備工事費と造作工事費の2つ分けられます。設備工事とは電気・給排水・ガスなど店舗の開店に欠かせない設備工事で、造作工事とは什器や看板など店舗の個性を出すための装飾部分を指します。

4-2 デザイン料の決め方

店舗デザインにおける設計デザイン費は依頼するデザイン事務所・設計事務所のクラスにより大きく異なりますが、

  • ①坪数×単価
  • ②工事費の10%前後

の2つが一般的です。

①の場合、10坪以下は一律で50万円など小さい物件に対しては別の料金体系が適用されることが多いので、小さめの店舗を考えている方は注意が必要です。

②の場合、デザインが固まらないと正確な工事費が分からないことの方が多いため、大体の工事費や予算から設計デザイン費を割り出し、先に施主とデザイン事務所の間で金額を確定しておく必要があります。

4-3 必ず予算内に収まるのか

店舗デザインにおいては当初予定していたよ予算をオーバーしてしまうことが多々あります。なぜそうなるのかというと、店舗デザインは着工してみないと分からない要素が多く、物件の状態によっては追加工事が発生したり、天候によって工期が伸びたりと、様々なことが起きる可能性があるからです。そのため施主はある程度予算とスケジュールに余裕を持っておくことが求められます。

4-4 支払いタイミング

デザイン設計費や工事費は金額が大きいため、分割で支払うのが一般的です。支払いのタイミングは依頼するデザイン事務所や施工会社により様々ですが、デザイン設計費は基本設計終了時に50%、引渡し時に50%、工事費は着工時50%、引渡し時50%といった分け方が一般的です。

5. デザイン事務所の選び方

検索している人

施主にとって最適なデザイン事務所を選ぶ際に重要となるのが、デザイン事務所の探し方と選定基準です。どのような点に注意していけばよいのか見ていきましょう。

5-1 デザイン事務所の探し方

デザイン事務所の探し方は大きく分けて3つの方法があります。それぞれの特徴を見ていきましょう。

友人・知人の紹介

友人や知人のつながりから店舗デザイナーを紹介してもらう方法です。

友人・知人の紹介の場合であれば、店舗デザインを安く請け負ってくれる場合もあるかもしれません。しかし一度紹介してもらうと、あまり好みのデザインでなかったり、人間的に相性があまりよくなかったとしても人間関係から断るのが難しくなるでしょう。

自分で探す

インターネットやメディアを介して自分で探す方法です。

一番のメリットは自分の好きな会社に依頼することができる点です。しかし常に情報を仕入れていない施主の場合は、一から探さなければならないため非常に手間のかかる作業になってしまいます。出店前は店舗デザイン以外にもやるべきことが多いので、デザイン事務所を探す手間を最小限にするために日頃から情報を仕入れておくとよいでしょう。

マッチングサービスを利用する

インターネット上のマッチングサービスを利用する方法です。

マッチングサービスには各事務所の情報や店舗デザイン事例が多く集まっているため、効率よくデザイン事務所を探すことができます。コンペ代行をしていたり登録会社を厳選していたりとマッチングサービスそれぞれにも特徴があるので、自分に合ったマッチングサービスを見つけましょう。

参考店舗開発を急加速!マッチングサービス利用で内装会社と急接近。

5-2 デザイン事務所の選定基準

デザイン事務所を探す方法をいくつか見てきましたが、最終的には依頼するデザイン事務所は自分の判断で一社に絞らなければなりません。

ではどのような基準をもとにデザイン設計事務所を選ぶべきなのでしょうか。誰もが有名事務所に依頼すれば、理想の店舗づくりができるわけではありません。デザイン事務所の選定基準をあらかじめしっかりと明確にしておきましょう。

業種・業態

多くの場合デザイン事務所は、得意な業種・業態を持っている場合を持っています。何でもできますという店舗デザイン事務所もありますが、基本的には過去の経験から特定の業種を得意としているケースがほとんどです。

過去の経験は導線や商品の見せ方とといった店舗デザインに大きく影響するので、なるべく施主がやりたいお店に近い業種・業態を得意とするデザイン事務所に依頼しましょう。

デザインテイスト

デザインテイストが施主の好みに合うのかも選定のポイントとなります。

例えば派手な造作や木を多用するというような業種・業態を超えて特徴的なデザインを得意とする人もいます。こうしたデザインは一部の人からは非常に高く評価されますが、もしかしたらあまり好まない人もいるかもしれません。過去の事例を見て、デザイン事務所の特徴をつかんでおくとよいでしょう。

価格帯

どのような価格帯の店舗デザインを得意としているのかも見ておくべきポイントです。

仮に同じ飲食店であっても、チェーン店の内装と高級店の内装では、意匠デザインの面で大きく異なります。予算に応じて使用する素材も違い、素材の見せ方でも特徴がでてきます。安い素材をチープに見せないようにするのが得意なデザイナーと、高級な素材の見せ方が得意なデザイナーどちらに依頼するのかは、予算に応じて異なるでしょう。

事前にどのような価格帯の店舗デザインをしているのかを調べておきましょう。

施主の要望に答えてくれるデザイナーか

デザイン設計事務所によってさまざまな違いがあるのは前述の通りですが、そのデザイン設計事務所の特徴が施主の要望を満たすのかは重要なポイントです。

施主が個人オーナーでまだどういったデザインがいいかよくわからないという場合には、施主の提示する情報に基づき積極的にデザインの提案をしてくれるデザイナーがいいかもしれません。一方で何度も出店を担当した店舗開発担当者であれば、意見を交わしながらできるデザイン事務所がよいでしょう。

担当者の人柄も重要となるので、どのようなコミュニケーションの手法がよいのかも考えておくとよいでしょう。

6. 店舗デザインを依頼する際に用意しておくべきこと

todoリスト

最後に店舗デザインを依頼する際に準備しておくべきことを挙げてみましょう。もちろん、施主は専門家ではないので全てを予め把握することは難しいですが、ある程度具体的な提案ができるようになっていると、その後のデザイナーとのやりとりがスムーズに進むでしょう。

6-1 参考となる店舗デザインをいくつか用意しておく

アタマの中に作りたい店舗デザインのイメージがあったとしても、それ言葉で伝えたり、ましてや素人が絵に書いて表現するのはそう簡単なことではありません。そこでおすすめしたいのが、いくつか自分が作りたい店舗デザインに似ている内装の写真を用意しておくことです。デザイナーも施主のニーズを理解することができ、打ち合わせもスムーズに進めることができます。

6-2 予算を決めておく

店舗デザインを考えるときは夢が拡がり、「せっかく出店するのであればあれもしたい、これもしたい」となりがちです。またデザイン事務所や施工会社も予算を意識した提案を行うため、予算が決まっていないと実現可能性の低いプランが出来上がってしまいます。

予めこの金額まで、という額を決めておいて、その範囲で何が出来るかを専門家と一緒に考える方が効果的です。

6-3 物件状態と契約形態の把握

店舗をオープンする予定の物件がスケルトン(壁・床以外何もない状態)なのか、居抜き(前の店舗の内装が残っている状態)なのかによって店舗デザインにかかる費用は大きく上下します。また賃料の発生日によっても空家賃(お店のオープン前に発生する賃料)が発生する期間や、オープン日などの全体のスケジュールが大きく左右されます。

7. まとめ:店舗オーナーが知っておくべき店舗デザインの基礎知識

本棚の本

7-1 そもそも店舗デザインとはどういうもの?

デザインと聞くと見た目のことを考えがちですが、家具や什器を店舗の広さに基づきどのように配置するかなどのレイアウト決め、工事ができるように設計図に落としこむまでが店舗デザインです。

7-2 店舗をデザインするデザイン設計事務所とは?

内装デザインのテイストや雰囲気を決め、設計図に落としこむ作業をするのがデザイン設計事務所です。事務所によって対象も特徴もさまざまなため、どのような事務所が適しているかをよく考えましょう。

7-3 店舗デザインの完成までの流れ

打ち合わせから基本デザイン、施工会社選定、工事の開始、そして竣工と、店舗ができるまでにはたくさんの人が関わり、それなりの期間を要します。そのためある程度余裕を持ってスケジュールを建てることが重要です。

7-4 店舗デザインにかかる費用

店舗の規模、または依頼するデザイン会社によってケースバイケースですが、① 坪数×単価、②工事費の10%前後、の2パターンが一般的です。実際の店舗を造る大掛かりな作業のため結果的に予算を上まってしまうことも少なくありません。

7-5 店舗デザインを考える際の注意点

デザイン設計事務所によって、その特徴はさまざまです。施主にとってどのようなデザイナーがいいかをよく考え、ミスマッチが起こらないよう施主のニーズをはっきりさせておくといいでしょう。

7-6 店舗デザインを依頼する際に用意しておくべきこと

店舗デザインの予算と物件の情報、そして賃料がいつから発生するのかなど、その物件の契約形態を把握しておくとデザイナーとの話がスムーズに進むので準備しておきましょう。

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