KUURAKU GROUPが語る「外国人に受け入れられる店舗」とは——店舗イノベーターサミット2017

2017年11月29日、未来の店舗づくりを考えるカンファレンス「店舗イノベーターサミット2017」(主催:シェルフィー株式会社)が、Nagatacho GRIDにて開催されました。 『日本から世界へ、海外出店とインバウンド』のセッションでは、KUURAKU GROUPの小林雄二氏がゲストとして登壇。フードリンクグループの酒井慎平氏と対談形式でセッションが行われました。

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店舗イノベーターサミットセッション4の様子

ローカライズはしない、ありのままの居酒屋ブランドを海外へ提供

KUURAKU GROUP小林氏

ひとつめのパネルテーマは「海外店舗のブランド形成」。インドやスリランカ、カナダ、インドネシア、全4カ国に出店するKUURAKU GROUP。はじめに「国の文化や習慣にローカライズしていくための仕組み」についてモデレーターの酒井氏から尋ねられたところ、意外な答えが返ってました。

小林「国内の居酒屋ブランドをそのまま突き通した方が売れると考えています。国ごとのローカライズはあまり意識せず、国内店舗のパッケージはほぼそのままに海外へ出店しています。たとえば食文化に関しては、やきとりは(これまで出店した)どの国も受け入れてくれますし、オープンキッチンは日本の居酒屋らしいシズル感を醸し出してくれるので、気に入ってくれるお客さんが多い印象です」

店舗内装においても、過度なローカライズはしないという。少しアレンジを加えて日本らしさとして浮世絵を描くことはあるが、過度な演出は見世物っぽく映ってしまうため気をつけているそうです。その一方で「居酒屋文化」の浸透に時間がかかったと小林氏はいいます。

小林「カナダに店舗を立ち上げた際、イメージ通り焼き鳥は受け入れてくれました。ただ彼らは食事は食事、酒は酒と分けるので日本ならではの居酒屋文化を浸透させることが難しかったです。カナダにおいて僕らは先駆けとして居酒屋を出店しましたが、他の日本企業が後発的に居酒屋業態を出店し、徐々に日本の居酒屋文化が定着してきましたね」

外国人のほうが接しやすい時があります

フードリンクグループ・酒井氏

文化の異なる海外では店舗の運営や現地スタッフの統制は頭を悩ませる問題です。KUURAKU GROUPはこの壁をどのように乗り越えたか紹介いただきました。

小林「現地スタッフがタバコを吸って店からいなくなったり、食材を盗まれたりしましたね。あと調理ではあたためると、ぬるくの違いはまったく通用しない。その場その場で指導するよりも、現地の文化を理解した上でしっかり仕組み化して対処した方が互いにとってやりやすいです。食べ物を盗むトラブルに関しては鍵を設置したりね。仕組み化すれば日本のやり方をそのまま入れられますし、そこまで苦労しないと思います」

逆に外国人スタッフは日本人より接しやすい点があるといいます。

小林「日本人の多少裕福なアルバイトよりも、稼いだお金を両親に仕送りする外国人のほうが接しやすい時がありますね。彼らはハングリーで吸収がはやいんです。外国人スタッフというと言葉や文化の壁があり育成に苦労するイメージを持ちますが、彼らが持つ強みを理解すれば自ずと接し方も変わりますね」

外国人客を惹きつける「飾らないおもてなし」とは

訪日外国人が年々増加し多くの飲食店が外国人層を奪い合う中、売上の3割がインバウンド層を占める店を持つKUURAKU GROUP。銀座という好立地を踏まえても多くの外国人が訪れています。その理由を紐解いてご紹介いただきました。

小林「基本的なことをしっかりやる。それがインバウンド集客の基礎だと思います。例えば外国人用のメニューシートを作ったり、店内にWi-Fiを設置して告知したり、本当に誰にでも思いつくようなことですよ」

過去効果があったのはホテルへの営業。ホテルの受付にチラシを置くことで、ホテルスタッフが外国人にチラシで紹介します。一見誰もが思いつくような仕掛けですが、KUURAKU GROUPはこういった地道な努力のもと訪日外国人を獲得していきました。現在は外国人集客の主流となっているトリップアドバイザーの運用も大きいといいます。ここでもKUURAKU GROUPの緻密さが輝ります。

小林「トリップアドバイザーに口コミを書いていただけるようにキーホルダーを配ったり、お皿をあげたりしています。あとは口コミにちゃんと返信してあげること。これは意外と重要です。そうすることでサイト上のランキングがあがり、店舗の集客力も高まっていきます」

こういったインバウンド層獲得への空気感が各店舗全体へ伝播し、店舗スタッフも主体性を持って取り組んでいるようです。また小林氏は「飾らないおもてなし」という言葉でセッションを締めくくりました。

小林「うちの店舗ではカウンターのスタッフが片言の英語や中国語でニコニコしながら話しかけてたりします。中国人のお客さんが来たときに、中国語で『いらっしゃいませ』といわれたら嬉しいじゃないですか。特別に何かをやっているわけではないのですが、こういった『飾らないおもてなし』が重要なんだと思います」

海外へ進出を目指す企業にとって大きなヒントとなったセッションに

店舗イノベーターサミット集合写真

日本食ブームや国内外食市場の縮小に伴い、海外進出に注力する企業が増加している一方でマクドナルドやスターバックスのように世界規模で成功を収める企業は日本にはまだあまり多くはありません。

今回のセッションではKUURAKU GROUPから、現地ならではのインサイトの考察やマーケティング戦略、スタッフへの対応プロセスが主だったテーマとなりましたが、これらは海外へ進出を目指す企業にとって大きなヒントになったのではないでしょうか。

KUURAKU GROUPは今後の出店戦略として大きなマーケットがあるインドを中心に出店していくそうです。今後の躍進に注目です。

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