愛される飲食店を数多く手がけるMoMo.株式会社・大島氏の語る「存続する設計」とは

なぜ建築家を目指そうと思ったのですか?また影響された人などいますか?

小学生の頃からはっきりと将来の夢は「建築家」でした。きっかけは、当時自宅の修理に来た大工さんに興味をもったことです。一緒に棚や椅子を作る作業を手伝わせてもらったり、とにかく大工さんが修理に来ていた期間はずっと一緒にいた記憶があります。また、自宅の前がたまたま設計事務所で、そこにも出入りしていました。簡単なものでしたが、模型のパーツを作る手伝いをさせてもらったりもしていましたね。もともと、ものづくりというものが好きだったんだと思います。

そのため大学も迷うこと無く建築学科を受験しました。大学では、学園祭で建物の三階ほどの高さのある風車や、演劇部とコラボして舞台ステージを作りました。このような経験をすることで、実際に手を動かして作るということが当たり前になったのかもしれません。

また、学生のころは谷口吉生さんの作られた建物をよく見にいきました。柱の間隔や大きさに合わせて、床のタイルが計算し尽くして置かれているんです。建築を少しでも学んだ経験がある人ならそれがいかにすごいかわかると思います。とても緻密な設計をしているところに感銘を受けました。

大学卒業後 人・空間研究所への入社経緯、また独立のきっかけはなんですか?

大学卒業後は、就職せず設計事務所のアルバイトや北海道のワークショップに参加していました。というのも卒業後初めて、将来の夢が建築家でいいのかと迷ったからです。それから1年後、友人が働いていた人・空間研究所から「手伝ってほしい」と声をかけていただき働き始めました。大きな建築物を作るよりは身近な建築物を作りたいという思いがあったので、人・空間研究事務所は自分の理想に近い事務所だったと思います。ただ当時実は、設計をするというより職人のように、壁や床を張ったり家具屋に送り込まれて家具作ったりということをしていました。(笑)

5年間努めていく中で、自分でもっといろんな可能性に挑戦したい、次のステップに進みたいという思いが強くなり事務所を辞める決断をしました。そんな時、以前から知り合いだった窪田さんから個人で請けられていた仕事を手伝ってくれないかと誘われました。そこに法人ではないと引き受けられない依頼がきたことがきっかけで、正式に法人化したのがSSSです。将来的にはもちろん独立しようと考えていましたが、このような形で28歳で独立するとは思いもしなかったですね。(笑)

窪田さんがSSSから独立され、その後株式会社として改編して現在のMoMo.株式会社となりました。仕事はMoMo.に頼みたいという理由であれば全て受けるようにしています。そのため、幸いにも休みがあまり取れず、大変だった時期もあります。(窪田氏:現窪田都市建築設計事務所代表)

デザインについてお聞きします。

どのようにデザインのアイデアが生まれてきますか?引き出しの増やし方などにおいて、工夫していることはありますか?

MoMo.株式会社・大島氏

難しい質問ですね。

現場に行ってクライアントと話をしていくうちに、アイデアが収束していく場合はスムーズに決まります。アイデアを考えるときは、確実に賑わいのある存続できるお店になるようなデザインにするよう気を付けています。方向性がなかなか定まらないときは、プラン・スケッチを何パターンも考え、そこから消去法でつぶしていきます。確信が持てるようになるまで、自分達で思いつく限りを出し尽くします。つまり、普段は偶然が重ならないとできない様なデザインを”必然的に起こす”方法ですね。

それでもどうしても考えが出ずいきづまったときは、渋谷の東急ハンズに行ったりもします。(笑)子供のころから、夏休みの工作の宿題をするために、東急ハンズの製作教室に参加しラジコンカーなどを作っていました。よく行っていたということもあり、今でも気分転換も兼ねて行ってしまいます。

引き出しの増やし方については、普段からインプットするのが当たり前になってますね。無意識にあらゆるものを見てこの素材はなんだろうとか、この机はどんな作りなんだろうとか考えています。

海外でのお仕事の際に気をつけていることはありますか?

MoMo.株式会社・大島氏

初めは日本人の方からの紹介で海外のお仕事をいただきました。和食屋さんをやらせていただいて、口コミで広がり海外の仕事が増えていきました。

海外でも国内でもデザインするときは、その場に行かないとはじまらないと思っているので、店舗の周辺を見に行ったり、調べたりします。長く続くお店を作っていきたいと思っているので、そのために売り上げを出すことも考えます。存続できるお店を作るという基本的な姿勢は海外の仕事の際にも、変わらず持ち続けています。

特に気をつけていることは、海外の方が日本と聞いてイメージするものは日本人が考えているより日本っぽい派手なものが多いので、海外の方のイメージに近いデザインを施すようにすることです。また、海外の場合は現場にいられる期間が限られているので、スピィーディーに仕事をすることも心がけています。初めて現場に行った際に、どのようなデザインにしたら人が入りやすい空間になるのかなどの最低限の内装の構成は考えるようにしています。

大島さんのビジネス面についてお聞きします。

クライアントとの信頼関係の築き方等、気をつけていることはありますか?

堅実なデザインを施し、結果を出してお客さんから良い評価していただくことで信頼関係を築くことができると思っています。

デザイン以外の、クライアントとのコミュニケーションの面では、主に意識していることが3つあります。1つ目はクライアントときちんと会って1対1で話すことで、最も大切にしていることです。最近は、メールや電話など便利になってきていて海外の仕事でもプレゼンの資料をメールで送るように言われ、そのまま話が進んで行くこともありますが、それでもできるだけ時間を作る努力をしています。自分たちのことを信頼して任していただくのは嬉しいですが、、それでも顔を見て話をしてクライアントと意思疎通をすることが、信頼関係につながると考えています。

2つ目は、クライアントと仲良くなってもある程度の緊張感を持って接することです。仲が良い間柄になって緊張感が薄れてしまうと直接会って話をする機会が少なくなります。それでは、お互いの考えが行き違ってしまい良い建物はできないと思います。

3つ目は、店舗が完成した後も、近くに行った際にはお店に顔を出してお店の雰囲気を見に行くことです。飲食店の場合は客としての視点も意識して、内装以外の面でも気づいたことがあれば伝えるようにしています。特にトイレなどの衛生面について注意して見るようにしています。

コンペや設計料など、業界で問題とされている点についてはどういう風に考えていますか?

MoMo.株式会社・大島氏

自分ができることは、クライアントに適正な金額を提示しどのようなメリットがあるのかを説明をすることだと思っています。飲食店の場合ですと、設計にたくさんのお金をかけられないところが多いと思うので、「長く続くお店にするための設計が実現できる最低限の金額」を提示するようにしています。自分たちの会社はもちろん適正な設計料を提示するようにしていますが、すべての設計会社にきちんとした設計料をクライアントに提示するようにしてほしいという気持ちはありますね。

コンペでもデザインと設計料を同時に提示する場合、デザイン重視ではなくなってしまっている場合があることは残念に思います。とはいえ、以前よりデザインにお金を払うという感覚の人が増えたように思います。施主側設計者側、お互いが正しい理解を持って仕事をしていけるように納得のできる説明をするということも心がけています。設計料の他にも業界の問題点というものはたくさんあって、業者不足や職人さん不足といった問題もこれから年々深刻になってくると思います。

大島さんの将来の展望をお聞きしたいと思います。

20年後の自分はどうなっていますか?また、目標はありますか?

抽象的になってしまうんですか、20年後色々なことがわかるようになったら、自分の作りたいもの作るのではなく、社会に必要な「存続できる」設計をしたいと考えています。飲食店の7割近くが長く続かず潰れてしまいます。その中で、長く残り愛される店舗を作っていきたいです。

社会的なニーズに基づいて作られるお寺や病院のような原則的に「存続できる」建築と違い、商業建築は社会的欲求ではなくビジネスを目的として作るので、絶対的に必要とされていないものを作るところが面白いと思っています。今はまだ、こういうものを作りたいという利己的な部分が設計の中にあるんですが、これからはデザインがより社会に必要な「存続できる」ものになっていく方法を生み出していきたいと思っています。

また、海外の業者や職人さんが増えていったり、日本に住んだり訪れたりする海外の人が増えてくると、海外の人をメインターゲットとしてデザインしていかないといけないような社会的変化が訪れる可能性があるので、その状況下での「存続できる」設計をするのはもっと難しくなってくるかもしれません。そうなった時に今の海外での経験を生かしていきたいです。長く使われるもの、社会のためになるものをデザインをすることによって日本に来たいと思う外国の方が増えたらいいなと思います。

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