一番詳しい!店舗デザイン・内装工事の依頼マニュアル

新規出店・改装をお考えの施主様向けに、適正依頼の方法を網羅的にまとめました。

このページを読んでほしい人

業種業態を問わず設計施工の依頼をお考えの施主様
法人・個人を問わず全ての方に役立つように書いています。

このページの大まかな内容

設計施工の、発注時から竣工までの適正な内容を具体的に。
内装会社様に嫌われず、やる気を引き出す依頼方法。

※非常に長い文章になっています。
最下部に箇条書きでのまとめを記載してありますので、
お時間のない方や具体的なノウハウだけを知りたい方はそちらをご覧ください。

レストラン、物販店、オフィスやクリニックなど、あらゆる業態で新規出店・改装などをお考えの方へ。
内装会社様へ設計施工の発注に際し「何が正解かわからない。」「自社のノウハウだけしか知らなく、他社のやり方を参考にしてみたい。」などといったお悩みはありませんか?

 

1000+

 

内装建築.comではマッチングサービスという特性上、これまでに施主様と内装会社様との間に入り約1,000店の新規出店・改装などをお手伝いしてきました。

その中で多く目の当たりにしてきたのが、(意識的に・無意識でにかかわらず)限度を超えた自社利益の追求により、お互いにとって有益な友好関係を築けないがために出店改装が思うような結果にならなかった事例です。
少しでも安く、早く、それでいて機能的で美しく。いいものを利益が出るように作りたい施主様の思いは当然のもの。
ですが、それが行き過ぎてしまうと結局は良い結果にならないことがほとんどです。

内装会社様は、お金を払えば仕事をこなしてくれる単なる外注先ではありません
ましてあなたの会社から不当に多額な金額を搾り取ろうとする、悪魔のような存在でもありません。

適正に付き合いさえすれば、習得までに何年も何十年もかかる特殊技能と多種多様な店舗に関わってきたプロならではの知見を提供してくれる、あなたの出店改装を成功させようと共に奮闘してくれるパートナーです。
そんな彼らに適正な距離感でのリスペクトの心を持ち、共に働きいい店舗をつくるパートナーとしての内装会社様との付き合い方を意識する必要があります。

内装会社様との友好関係を築く。
店舗内装に関して言えば、大枠ではその一点だけが成功の秘訣と言えます。

内装会社との信頼関係

ここではどんな業種にも共通する設計施工発注の際の注意点・意識すべき点をノウハウ化し、網羅的にまとめました
依頼前の準備・コンペ時の注意点・工期中にすべきことまで、数多くの施主様や内装会社とお付き合いしてきた内装建築.comだから書ける、内装会社様への適正な依頼方法の全てを記載してあります。

かなり長い文章となっていますが、現在のわたしたちが考える適正以来の全てを網羅した、ぜひとも読んでほしい内容となっております。
適性で双方に納得感の高い依頼をし、出店・改装を成功に導く手助けになれば幸いです。
それでは、さっそくみていきましょう。

1. 依頼前の準備編

準備編はざっくりこんな内容

  1. お店のコンセプトをしっかり考えておく
  2. 物件取得を済ませておく。少なくともオーナーに申し込みはしておく
  3. 収支を計算し回収できる最大金額を予算とする
  4. 平均的な予算金額と実際の事例
  5. 新規出店、全面改装の場合はオープン3ヶ月前には依頼する

何事も余裕をもった準備が大切です。
店舗デザインは、施主様側の持っている情報を整理し店舗というアウトプットで最適なカタチに再構築する仕事です。
情報が多ければ多いほど、また精度が高ければ高いほどより良い成果物が生まれる可能性は高くなります。

情報を多く

またそれは同時に、クライアントとしてのやる気をみせる意味も持ちます。
内装会社様は生業ではあるのでお金はもらってはいますが、人としての本質的にクリエイターであることがほとんど。
やる気や情熱を持って熱くぶつかってくる施主様には、契約以上の価値で返そうとしてくれる内装会社様も多くいらっしゃいます。
自社での仕事の仕方を考えてみても、他人に丸投げして「あとよろしく」のような依頼方法よりも「ここまで整理して自分はこう考えたのだけれど」のように協力体制を築く進め方ほうがいい仕事ができるはず。

パートナーが中にいるか外にいるかの違いだけで、人と人との付き合いである以上いい仕事の仕方も同じです。
内装会社様と共にいい仕事をし、世の中に良い店舗を生み出すために、自社で出来ることはすべてやりきってしまいましょう。

これより下に、その方法を具体的に記載していきます。

計画は前もって細かく練る

お店の理想イメージや収支計算など計画は前もって細かく練り、内装会社様には確度の高く深い質問しかさせないくらいの心構えでいきましょう。 飲食店であればメニュー構成・料理に使う素材・伝えたい文脈、物販店であれば何を扱いどの程度在庫を置き、季節ごとにどのようなアプローチで顧客との関係性を築くのかなど。
考えられることは沢山あります。
どのように実行するかのHowの部分は内装会社様と相談して決めたほうがいいですが、何をしたいか・なぜしたいかの部分はなるべく細かに決めておくべきです。

特に計画しておくべきポイントは下記の通り。

1. お店の全体コンセプトを考え抜いておく

例えば飲食店なら。
お客様となるターゲット層とペルソナは誰か。彼ら彼女らにどんな料理を提供して、何を体験してほしいのか。彼らの人生をお店や料理を通してどのように豊かにしてあげられるか。そこから導き出されるお店のデザインイメージやメニュー構成、冊子やカードのイメージや、お店に置く器やカラトリーの雰囲気まで。なるべく細かに「こんな体験をしてほしいんだ!」というものを考え抜いておきましょう

博多屋大吉銀座店

コンセプト制作のわかりやすい例として、”Soup Stock Tokyo”のペルソナマーケティングがあります。
「秋野つゆ」という架空の人物を作り上げ、彼女の性格・趣味・好きなことや嫌いなことなどを細かに設定。その上で「秋野つゆが通うお店」を徹底して作り上げました。
その結果は知っての通り。創業10年で売上高42億円・52店舗の誰もが知るブランドに成長しました。

どんなお店を作りたいのか。大枠の部分を内装会社様に伝えられる準備をしましょう。

2. 物件の取得を済ませておく

依頼前に物件契約を完了しているとベスト。少なくとも物件オーナーに申込みまではしてもらえると発注がスムーズに進みます。
内装会社様は年間で少なくとも100件以上の出店・改装に携わるので、物件未取得の案件を進行することもしばしばです。
そしてその場合に稀に起こり得るのが、ヒアリング・店舗デザイン・コンペでの提案と修正まで終わってから「物件取得が失敗、計画頓挫しました。」と言われてしまうパターン。

内装建築.comでもたびたび経験してきました。

施主様からするとそんなことありえない話のように思えますが、法人から個人まで数多くの店舗に携わる内装会社様の中にはそんな経験をされている方も多くいらっしゃいます。

施主と店舗デザイン会社のやりとり

そしてそんな経験をされた方が依頼を受ける際に「物件未取得です。」と言われてしまうと、身構えてしまうのも当然です。
大きなリスクがあるモノゴトを進行する場合、どうしても不安が先に立ち100%のパフォーマンスを発揮できないもの。内装会社様もそれは同様です。
物件は依頼前にキッチリ取得しておくか、少なくともオーナーに申し込みまではしておき、依頼先を安心させてあげましょう

3. 予算はだせる最大金額の提示がオススメ

予算はいくらつければ良いのか。何度も出店を経験されている法人施主様でも大きな悩みどころです。
そんな場合におすすめなのが、出来る限り多くの予算をつけてしまうこと。

お金の束

立地、業種業態、過去の出店状況、他社の事例、時代背景に提供サービスなど、複合的な文脈から事前に収支計画を立てるかと思います。
そこから回収できる最大金額を予算として組み立てることがオススメです。

内装会社様のよくある手法として、コンペ時に「松」「竹」「梅」のようないくつかのプランを用意しプレゼンするものがあります。
提示された予算通りのプランが「竹」、それより良いものが「松」、安い部材で安価に仕上げたものが「梅」と言った具合です。
目の前によく練り込まれたプランと綺麗な3DCGパース、未来を想像できるようなストーリーを提示されると、人はどうしてもより良いものを選んでしまいがちになります。
その結果、当初の予算をオーバーしたプランとで迷いが生じ、社に持ち帰って検討。ズルズルと調整が長くなる。結果的に工事期間などが押してしまう。なんてことも起こりえます。

店舗デザインプランに迷う施主

複数のプランを作ってもらい検討の幅を広げること自体は、いい店舗を生み出すためにとても有効な手段です。
ただし、その使い方を間違えないようにだけ最初に設定しておくことが大切。
あらかじめ「これが自分たちに出せる最大金額です。」と予算を提示し、その範囲内で複数のプランを練ってもらうようにしましょう。
しっかりとした内装会社様であれば多すぎる場合はそのように言ってくれ、無駄に多く使うこともなく良い店舗を作り上げてくれます。

4. 平均的な予算感

そうは言っても一般的な相場というものももちろん存在し、そこから外れすぎないことも重要です。低すぎる予算を提示してしまった場合、仕事に困っていない良い会社には入り口で断られてしまうことも多くあります。
低すぎる金額で依頼をしても受けてくれる内装会社様には、もしかしたらそれなりの事情があるのかもしれません。

飲食店であれば坪単価70万円ほど、カフェなどの軽飲食の場合は坪単価50万円ほど。
物販店であれば坪単価40〜50万円、高級感が求められるジュエリー系の店舗は坪単価90万円ほどが平均値と言われています。
が、これはやりたいことや使う部材、物件によって大きく上下します。
機材がそのまま使える居抜きなのか新設か、家具のテイストや造作の多さなど、複合的な要因でどの程度のことまでできるのかが変わってくるためあくまで目安としてこれより安すぎない程度は提示できるようにしておきましょう。

また内装を大きく変える場合には、退去時の原状回復費用も見込んでおく必要があります。
もろもろの条件によっては坪単価100万円程度になってしまう可能性もあります。
上記内容をを基本とし、造作や部材、改装の規模感などに合わせて予算を組み立てましょう。

予算間の目安

また、飲食店の場合は設備に大きくお金がかかります
冷蔵庫、コンロ、調理台に排煙機能などなど。場合によっては安いと思って居抜きで入っても設備のせいでスケルトンと同じくらいかかる可能性があり、やはり一概に業種や業態でいくらかかるとは決められない部分があります。

参考として、いくつか実際の事例を掲載しておきます。
上述したとおり、同じ業種業態でも大きく金額感が変わる可能性もあります。あくまで参考程度にご活用ください。

フレンチレストランの事例
業態
フレンチレストラン
坪数
18坪居抜き(キッチン、テーブル、椅子等全て使える状態)
予算
380万円(21万円 / 坪)
備考
お問い合わせ時の予算提示は500万円だったが、要件や希望を内装会社様に話したところ120万円安い380万円で実現した。
大手チェーンステーキハウスの事例
業態
大手チェーンステーキハウス
坪数
67坪居抜き(設備等何もなし)
予算
4900万円(73万円 / 坪)
備考
お問い合わせ時の予算提示は6700万円だったが、1800万円安い4900万円で実現。出店先物件であるSCに強い内装会社を選定できたことも要因に。
個人雑貨店リニューアル
業態
雑貨店
坪数
7坪
予算
500万円(70万円 / 坪)
備考
設備やドア等すべて取り替え、什器も入れ替えるため一般的な相場観より高めの価格に。
大手シューズメーカーチェーン
業態
物販店
坪数
17坪
予算
870万円(51万円 / 坪)
備考
設備もなにもないスケルトンの状態からの新規出店。

5. オープンの三ヶ月前には設計施工の依頼を

どんな仕事でも短納期は嫌われるもの。
特に内装会社様には想像を絶するほどに多忙な方もたくさんいるので、その中で無茶な仕事を依頼すると嫌われるどころか品質も影響が出かねません
期限があり予算があり、アウトプットに100点満点が存在しない仕事という特性もあって、夜遅くまででも土日祝日でも頑張ってくださる内装会社様がたくさんいらっしゃいます。

そしてアウトプットに正解がないということは、モチベーション高く仕事をしてもらえれば仕事のクオリティをが大きく向上するということ。
相手もプロフェッショナルですから最低限のものは必ず提出してくれますが、そこを超えた本当に良いものを作り上げたい場合には働きやすく、モチベーション高く向き合える依頼内容を整えることも重要です。

短すぎずかと言って長すぎず。
仕事の質を落とすことなく、かつ長期間というほどの作業時間でもない。ヒアリング力や提案力が均質化しすぎず実力の差がわかりやすい、適正期間を設けて依頼するように心がけましょう。
具体的には下記程度になります。

設計施工依頼の適正期間
打ち合わせ〜ファーストプラン提出
最低3週間
詳細打ち合わせ、修正・調整期間
1ヶ月程度
見積もり制作期間
2週間程度
工期
工事内容によって3週間〜45日程度

特に見積もりに関しては1週間など短期での依頼が大変多くなっていますが、これは大変に危ない行為
短期間で見積もりを作る場合、ひとつひとつの項目の正確な確認ができず振れ幅が大きくなってしまいます。

 

適正発注のメリット

 

その結果何が起きるかというと、内装会社様は赤字にはできないので高い金額でまとめて提出されてしまうことがあります。
急ぎで依頼したがために、実際よりも高い金額で提示される。正しくない判断で本当にいい会社様とのご縁が切れてしまったりなど、施主様にとってのマイナス面が大きな行為でもあるのです。

2. 依頼編

準備編はざっくりこんな内容

  1. 依頼時期ははやめはやめに
  2. 伝えるポイントを抑えてしっかり依頼
  3. 資料をなるべく用意する
  4. その他の注意

店舗の設計施工を依頼する場合、複数社に声をかけてコンペを開催することがほとんどです。
事前にしっかり準備するべきであるということはここまで見てきた通りですが、もちろんコンペもただ開催すればいいというものではありません

コンペでの提案が実際に施工される店舗の元となってきますので、ここで内装会社様の実力を100%引き出せるような「いいコンペ」を行い、納得のいく提案をベースにさらに揉んでいきたいものです。

良いコンペでいい店舗を

以下では「いいコンペ」とはどのように開催すればいいかを具体的に記載していきます。
いいコンペができるかどうかは依頼時の対応にかかってるのです。

1. 依頼時期ははやめはやめに

まずは依頼する時期です。
コントローラブルな「自社の都合のいいタイミング」と、コントロールできない「内装界隈の繁忙期閑散期」の2つの軸で見ていきましょう。

依頼タイミングは前述のスケジュールに沿って、着工の10週間前までには行いましょう。
無理をしてもらえば短くてもなんとかなる場合もありますが、無理をする=どこかに歪みが生まれているということ。
それが店舗デザインや施工の質に現れるか、内装会社様側でこっそり我慢しているかは場合によりますが、誰も不幸にならない健全な仕事をしていきたいものです。
特に長時間滞在や内装への接触回数が多い店舗内装の場合、施工の品質は一般よりも重要と言えます。
余裕を持って、早め早めの依頼を心がけましょう。

内装会社の繁閑

設計施工を依頼する場合は世の中的な出店ラッシュを控えた10月から3月は関連内装会社様の繁忙期となっています。
ひどい場合何週間も家に帰れないなど、一般的な常識では考えられないほどの多忙であるため、普段通りの仕事ができないばかりか内装会社様のキャパシティを超えていれば依頼を断られてしまうことも珍しくありません
この時期は優秀な内装会社様であればあるほど依頼できなくなってしまうため、出店・改装がここに被ってしまうようであれば、さらに余裕を持ち前倒して依頼しておくようにしましょう。

2. 伝えるポイントを抑えてしっかり依頼

続いて依頼時のメールや電話で伝えるべき項目を記載していきます。
何も伝えずに「とりあえず話をしたいから会いに来てよ。」と呼び出すパターンを見かけますが、それはお世辞にも良いとは言えない行為。
初回ミーティングで事前情報が何もないと、いくら向こうが経験豊富なプロとは言えベストな回答はできないもの。前述したとおり情報の組み立てが店舗設計施工の仕事ですので、その材料なしでは曖昧な一般論でしか回答できないのです。
依頼時のメール・電話などで少なくとも下記程度はしっかりと伝え、初回のミーティングから実のある議論を交わし、お互いにモチベーション高い状態で店舗づくりに入っていきましょう。

さて、具体的に伝えるべきことは下記の通りです。

依頼時の電話やメールで伝えるべきこと

  1. やりたいことを端的に
  2. 理想のイメージをいくつか
  3. スケジュール感
  4. 物件の状況
  5. 予算
  6. 支払い条件

2-1・2-2. なにをやりたくて、どんなイメージを持っているか

「カフェを開きたいんです。理想のイメージは鎌倉にある◯◯というカフェで、地元の人がゆっくりとくつろいでくれうような…。」
なんてイメージをあらかじめ出来る限り詳細に伝えておきましょう。

普通の内装会社様であれば、初回打ち合わせ時にプロならではの視点から参考事例やアイデアなどを持ってきてくれます
逆にそういった情報を伝えた上で事前準備が何もないようであれば、その案件に対する熱意がそんなに高くないのかもしれません。
初回打ち合わせでスクリーニングをするという意味でも、決まっていることで伝えられる情報は事前にしっかり伝えておきましょう。

2-3. スケジュール感

前述の内容が理想的です。自社で決めた内容を伝えておきましょう。
「その時期は忙しくて。」なんてこの段階でお断りとなってしまう場合ももちろんありますが、しっかりと動ける会社様とのお付き合いは大前提ですので、曖昧な状態を作らないという意味でも重要です。

2-4. 物件状況について

前述の通り依頼前に取得しておくか、少なくとも物件オーナーに申し込みを済ませておきましょう。
その上で、現在どのような状況にあるのかを依頼時に伝えておきましょう。
契約済みなのか、申し込みを済ませていつ頃決定するのか。
もしかしたら事情があり未契約の方もいらっしゃるかもしれません。その場合はいつごろ契約予定であるのかを伝えられるようにし、余計な不安やリスクを感じさせないようにしましょう。

また、物件の契約状況だけでなく状態も伝える必要があります。
坪数はどれくらいなのか。スケルトンなのか、居抜きなのか、設備や機材は使用可能なのか。用途変更の申請は必要なのかなど、なるべく精度の高い情報を事前に提供しておくことで初回から実のある面談を行うことが可能です。

2-5. 予算

予算については前項の通り。
収支の計算から自社に出せる最大の金額を予算と考え、その旨をしっかりと伝えることをオススメします。
そうすることで予算以下の金額での比較が可能となりますので、想定外のことに悩む事がなくなります。
また、家具・厨房設備・装飾物などを設計施工料に含むかどうかもここで伝えるようにしましょう。

参考

店舗デザイン・施工に必要な費用は?〜複雑な費用管理を簡単に〜

2-6. 支払い条件

支払い条件に関してもここで伝えられるといいでしょう。
一般的には、50%を着工前に、残りの50%を竣工時に支払うといった半金ずつでの支払いが多くなっています。

支払い条件

実際にはコンペ後などに内装会社様とのやりとりの中でしっかりと契約を結ぶ必要がありますが、依頼前にしかっりと共通認識を持っておくことに重要な意味があります。
一般的な支払い方法を提示してくれる、安心できる仕事相手だと思っていただくだけで依頼を受けてもらえる可能性もいい仕事をしていただける可能性もぐっと高まります。
もちろん電話口で伝えるだけでなく、実際にその内容通りに支払うようにしましょう。

3. 資料をなるべく用意する

百聞は一見にしかず。
理想の店舗イメージについて口頭でアレコレ伝えるよりも、ビジュアルで一発バシッと共有することをオススメします。
考えていることを言語化して100%伝えきる難しさは周知の通りだと思います。
伝えきらなかったがためにお互いの認識のズレが生まれてしまい、優秀な内装会社様の実力が発揮されきらないままご縁が切れてしまうのも非常にもったいない話です。
少し大変ですが事前にしっかりとビジュアル資料を用意し、依頼する全内装会社様と共通認識をとれるようにしましょう。

具体的には依頼時に下記のような資料を用意すると良いでしょう。

用意しておくといいビジュアル資料

  1. お店のコンセプト概要資料
  2. 物件状態の写真
  3. 各種図面
  4. デザインイメージ画像(もしあれば)

3-1. お店のコンセプト概要資料

多くの場合は社内提案時に使用した資料を先に制作済かと思われます。
そこから社外秘など出せない情報を除いただけのもので、充分作りたいもののイメージ共有は可能です。

3-2. 物件状態の写真

早い段階での物件状態の共有をしておかないと、思わぬトラブルとなる場合もあります。
実際にあったトラブル事例からみていきましょう。

事例

飲食店の新規出店にあたり、居抜き物件を契約。設備や厨房関係はすべて使えると考え、コンペ参加社にもそのように伝えていた。
その後コンペで参加社を絞り込み、いよいよデザイン案を元に実施図を制作という段階ではじめて内装会社様と共に現調へ。
そこで発覚したのが驚愕の事実。物件の設備が全く使えないものだったのです。
結局予算が当初の考えよりも大幅にオーバーし、出店そのものがなくなってしまった。
施主様の出店は頓挫することとなり、内装会社様のそれまでの仕事はすべて無いものとなってしまった。

などという、信じられないようなトラブルが過去に実際にありました。
事前に現調写真を共有し、本当にその予算が適正であるかをプロの目から見極めてもらうことも重要です。

3-3. 各種図面

最低限、平面図は用意しましょう。多くの場合は物件オーナーが持っています
CADのデータであればベストですが、古い物件の場合は紙や手書きの図面をスキャンした画像でしか存在しない場合もあります。
そこからの情報と現調での採寸からでも充分に設計図面の立ち上げは可能ですので、「こんなものじゃ役に立たないかな。」と思うような図面でもとりあえず共有しておきましょう。

図面

他にもこの段階で共有してくださると嬉しいのは、天井の形状を記載した天井伏図・コンセント・スイッチ位置図、設備図面などです。
多ければ多いほど内装会社様としては助かるものですが、ほとんどの場合は平面図のみか、あっても天井伏図くらいなものです。
まずはとにかく、物件オーナーに問い合わせて図面をいただきましょう。

3-4. デザインイメージ画像(もしあれば)

これはできれば、です。
イメージに近い店舗の写真があれば、事前に複数集めてまとめておきましょう。
そうすることで認識の差異を埋めることにつながりますし、そのビジュアルの何が良いと感じたかなど、さらに深く突っ込んだヒアリングをしてもらえやすくなります。

pinterestの画面
画像検索に特化したWebサービスの活用もオススメです

ただし、逆にここで提示したイメージに引っ張られてしまうこともあります。
全く新しいコンセプトの店舗を作る場合には、敢えてビジュアルイメージを共有しないというのも一つの手です。
その場合は前述のコンセプトをより深く詰めて、店舗づくりの根幹となる達成したい目的を通常以上にはっきりとさせておきましょう。

4. その他注意すること

情報の共有以外にも下記のようなことに注意する必要があります。

4-1. コンペ社数

コンペを開催する際に、「多くの内装会社様に声をかければかけるほど選択肢が増えてお得!」というようにお考えの施主様と引き合うことがあります。
しかしそれは大きな間違い。コンペには適正社数というものが存在し、案件の規模にもよりますが通常は3社、最も多くとも5社までとするのがオススメです。

コンペは3社が適正。最多でも5社に。
コンペは3社が適正です

それはなぜか? コンペに参加する内装会社様の立場で考えてみましょう。

コンペ参加の依頼を同時に2件受け、片方は3社でのコンペ。もう片方は10社でのコンペでした。
単純に考えると、同じ労力をかけ片方は30%の確率で受注できる。もう片方は10%です。
よほどその他の条件を良くできるのであればともかく、そうでもなければどちらに力をかけ良い提案をしようとするかは明白です。

できるだけ多くの案を比較検討したい気持ちは当然ですが、内装会社様からのベストな提案を受けられる範囲に留めるよう心がけましょう。

4-2. 今回のプロジェクトの要望に優先順位つけておく

デザイン性・価格競争力・スピード感・施工の質・全国対応力・説明力…。
内装会社様に求める項目は数多くあると思います。

社内の検討基準がバラバラでは、決まるものも決まらずあっちこっちに意見が流れてしまいます。
求める要素を洗い出し、あらかじめ優先順位をつけ社内で共通認識を持つようにしておきましょう。

内装会社様への希望要件の順位付け
選定時の優先順位と、マストな条件を全員で共通化しておきましょう

4-3. 情報の均等性

情報の均等性も意識すべき重要ポイントです。

コンペ内容の説明方法には大きく2つの方法があります。
参加候補社すべてを集め一斉に説明する説明会方式と、各会社ごとに面談の場を設けて一社ずつ説明をする方式です。
それぞれにメリット・デメリットがあり、どちらがいいかは自社の状況と相談して決めていただいてかまいません。

コンペの説明方法によるメリットとデメリット
いい面と悪い面があります

ただしここで特に気をつけたいのが、面談を行う場合の情報の均等性。
順に説明を行いプロならではの視点からの質疑応答を受けるため、施主様側としても各回ごとに「そんな視点があったのか。」などといった新たな気づきが多くあります。
それを次の面談会社に伝えて、そこで出てきた新たな気づきをまた次の会社に伝えて…。とやっていくと、最初の会社と最後の会社で持っている情報量に大きな差が出てしまうことがあります。
前述したように、設計施工は情報整理の仕事という側面も持ちます。
使える材料に差があっては公平な勝負ができないというもの。
全ての面談が終わった後にでも、改めて各社から出てきた質疑の内容などを全社に共有するようにしましょう。

4-4. 期間の均等性

同様に期間の均等性も大きなポイントです。
ファーストプラン提出までの間は1日、1時間という少なく見える時間でも大きな影響を及ぼします
初回打ち合わせからファーストプラン提出までは、上述の通り理想的には3週間ほど
そして実際には1週間から2週間程度の場合がほとんどです。
そのような短期間の中では少ない時間であっても、割合としては通常の業務時の感覚以上に重くのしかかってきます。
前述スケジュールの項目でも書いたように、期間がなく見積もり精度が保証できない場合には高い金額で出すしかない状況になってしまいます。

なかなか難しいものではありますが、すべての会社に同じだけ提案期間を設けて同じ条件で勝負してもらうよう調整しましょう。

3. コンペ編

選定した内装会社様への依頼が完了したら、いよいよコンペの開催です。
ここで気をつけなければいけないことは一点だけです。
参加社の持つ能力を100%引き出せるような良質なコンペを開催すること

当然のことですがついつい施主様側からの視点だけで進行してしまい、内装会社様側がどのような考えを持つかを忘れてしまいがちです。

その目的を達成するためにどのような考え方をすればいいかみていきましょう。

公平なコンペのために、参加社にはすべて公平な条件で競っていただく必要があります。
「そんなの当たり前でしょ?」と思われるかもしれませんが、これ中々難しいのです。
もちろんニュースでよく聞く出来レース的なデザインコンペほどではないにしろ、よく気をつけておかないと無意識のうちに公平性を欠けていってしまうもの。

たとえば顔合わせの日がずれただけで、その日数分のアドバンテージが生まれてしまいます
説明時の質疑応答で重要な意見が浮かび上がった場合、それを他の会社にも伝えてあげないと結果に大きな差が出ることもあります。

条件が違えば、当然ですが成果物に差が出てきてしまいます。
知らず知らず不公平な条件になっていってしまったせいで、本当に良い会社と共に仕事ができなかった。なんてことになると大きな損失です。
すべての事柄を公平に。というのは難しいというかほぼ無理なものですが、それでも出来る限り同じ条件に整えるよう心がけましょう。

以下では特に気をつけるべきことを記載していきます。

同じ日に顔合わせ→同じ日にコンペがベスト

ファーストプラン・見積もり提示までの期間を各社で揃えるよう調整しましょう。
前述の通り、短いコンペ期間の中ではたった1日、たった数時間というわずかな差でも成果物に大きな影響を与えます
そして内装会社様の提案は全て施主様のためのものですので、結果的にその影響は施主様側に響いてきます。

施主様としても、会議まであと数時間あれば良い資料ができたのに。なんてことが往々にしてあるかと思います。
ある内装会社様は時間に余裕をもってとりくめ、別の会社は余裕のない中で及第点のものしか出せなかった。
なんてことになるとお互いに損でしかありません。 期間の統一はしっかりと意識しましょう。

各社の質問をオープンにする

顔合わせ・打ち合わせ段階で各社に対して質疑応答の時間を設けるかと思います。
そこで浮かび上がった内容は全社に共有するようにしておきましょう。

「質問力もみたい。」という意見もごもっとも。質問力はそれはそれで評価しましょう。
ただし良い質問をしてくれたことと、そこから出てきた情報を知っているかどうかはまた別の問題です。
各社にベストな提案をしてもらうために、全社に出来る限りの情報量提供すると言った意味でも、すべの質問事項をオープンにしていきましょう。

提案資料は事前に指定しておく

最低限「これとこれは出してほしい。」という提案資料についてはあらかじめ指定しておきましょう。
あの会社は3DCGでのパースをくれたが、こっちの会社は手書きのスケッチだった。CGのほうが具体的なイメージはついたのでそっちを選んだが、実は本当に良いのはスケッチを提出してくれた会社だった。なんてことが起こらないように、同質のもので比較できるようにしましょう。
よくある提出物の内容としては、コンセプト・図面・パースがまとまった「デザイン提案資料」 + 「見積もり一覧」の2点セットです。

さらに、提案資料を指定することは比較できる以上の効果も狙うことができます
例えば提案のために模型がベストであれば、内装会社様の判断で模型を追加で持ってきてくださることもあるかと思います。
自分たちの判断で指定されたもの以上を出してくれる内装会社様には少なくともその案件に対するやる気は伺えますし、各案件にとって最適な応えを出す能力があるとも言えます。

そういった意味からも、「最低限」これを提出してください!という内容を指定することをオススメします。
内装会社のポテンシャルを100%引き出すために、内装会社様のもつ能力をすべて出しきってもらえるようなコンペ開催を心がけましょう。

質疑応答は積極的にする

いただいた提案内容について少しでも気になることがあったら、遠慮せずにどんどん聞いていきましょう。

コンペフィーを用意すること

内装会社様のWEBサイトやパンフレットをみると「初回提案までは無料で承ります。」という文言を目にします。
が、これは内装会社様がやりたくてやっているわけではありません。
そうでもしないと依頼をいただけないという、クリエイティブ全般における業界構造の歪みのせい

ランチタイムにオフィス近隣のお店いくつかで注文して、一番美味しかったものだけにお金を払う。なんともおかしな話ですが、それが当たり前になってしまっているのがクリエイティブ業界の不思議なところ。

2週間のコンペでプロジェクト進行に1人・ディレクションに1人・設計に2人・見積もりに1人などなど、ものすごく多くの人々に関わっていただいています
タダ働きをさせるのではなく、コンペに参加してくれた内装会社様には成約の可否にかかわらずコンペフィーをお支払いするようにしましょう

それがあるだけで「良いクライアントだ。」「しっかりした会社だ。」という意識を持ってもらえ、提出物の品質向上にもつながります。
また案件の多い内装会社様の場合、依頼の段階で断られてしまうこともしばしばありますが、コンペフィーを設定しておくだけで参加拒否を減らすこともできます。

金額としては1社あたり10万円程度が相場。
良い会社に参加してもらうため、良い提案を受けるため、その後の関係性を良好にするため。半ばないことが当たり前になっているものですが、しっかりと用意し支払うようにしましょう。
自分たちも、タダ働きはしたくないですよね?

社長や上長など決定権のある人を同席させる

コンペを終えてあとは社長に報告、プロジェクトを進めるだけだ!
で、社長に報告すると「なんか違うんだよね…。」と。
結果的にすべて振り出しに戻り最初からやり直し。施主様も内装会社様も大赤字。なんて冗談みたいな話ですが、内装建築.comでは多くのプロジェクトに関わる中で何度かこんなことを経験しました。
3歩進んで2歩下がるならまだしも、プロジェクト自体が立ち消えになることもあります。

これまでの時間をムダにしないためにも。また、関わってくれた多くの人々の努力をムダにしないためにも。コンペの場には必ず決定権のある人に同席してもらうようにしましょう。
コンペの意思決定の場だけでなく、最初から逐一報告して承認をとっておくのがベストです。

コンペを終えて

実はこれでデザインが決まりじゃないんです。
コンペでいただいたデザイン提案を元に実際の施工にはいっていくのですが、コンペの場ですべてを決定させる必要はありません。
色味や細かな部分などはその後に修正期間を設けて直してもらうことができます。
コンペ時に細かな部分をみて「これはできないから。」と依頼先を決定するのではなく、焦らず全体感を把握しましょう。
この後にも書きますが、パートナー企業を決めるという意識で臨みましょう。

4. 依頼先決定編

コンペを終えたら、いよいよ発注先内装会社様を決定しましょう。
きっとどの内装会社様も素晴らしい提案でワクワクさせてくれたはずで、どこに依頼すればいいか迷うかもしれません。
そんな方への、依頼先の上手な決め方を綴っていきます。

まずはともあれ、決定会議の前に『依頼前の準備編』で決めたプロジェクトへの要望の優先順位を改めて全員で確認しましょう。
選定に関わる人が多ければ多いほど、良いコンペであればあるほどにあれもこれもと考えがブレていってしまいます。
当初の出店コンセプトとズレることなくいい店舗を生み出せるように、あらかじめ依頼先決定をスムーズに進められる準備をしておきましょう。
パートナー企業を決めるという意識をもつ
コンペにはデザインの方向性を決める意味合いがありますが、デザインの細かな修正はその後の詳細打ち合わせにて変更できます。
依頼先決定にはそのお店に来てくれたお客様がどのような体験をするのか、どう豊かになってくれるのかを考え抜かれているかなど、大きな枠で物事を捉える意識を持ちましょう。

そしてコンペ後こそが店舗づくりの本番。ここで決まった内装会社様とは長い付き合いになります。
担当者の人柄や対応力なども加味して、「この内装会社とパートナーとして一緒に仕事をしたい!」と思える会社様とのお付き合いを決めましょう。

安すぎてない?適正価格の意識

見積もり提案に目を向けましょう。
見積金額が低いのは嬉しいものですが、安ければ安いほど良いというわけではありません
他社よりも飛び抜けて安い場合には、逆に疑ってみる注意力が必要です。

デザイン面で安すぎる場合、部材や家具に安いものばかり使っている可能性があります。
プレゼンシートの画像上では同じに見えても実際のものをみてみると明らかな差があり、自社のブランドイメージを崩しかねない場合もあります。
そういった提案を受け入れてあとで修正を依頼する場合、だんだんと金額が膨れ上がっていってしまうが、期間もないので泣き寝入りするしか無いなどといったトラブルも。
安すぎる場合は冷静になり注意して、時間がないかもしれませんが、一部でもいいので展示場などで現物をチェックしたほうがいいでしょう。
また、コンペ提案時にサンプルの提出をマストとするのも有効な手です。その際はサンプル納品までの期間も計算に入れてコンペ期間を設定しましょう。

施工の場合は安ければ安いほど人工を削っている場合があります
結果的に施工の質がひどく、床や壁などの張り材が浮いてきたり、塗装が禿げてきたり、設備が動作しなかったりといったトラブルに見舞われることも。
あとから補修すると大きな金額がかかるのはもちろん、オープンしたてのお店で内装へのクレームやネット上の悪いレビューがつくことも致命的です。
あまりに施工見積もりが安い場合、人工など適正になっているかを確認しましょう。

どちらの場合も、店舗づくりには「適正価格」というものがあります
適正を見極めて長く使える店舗をつくるよう心がけましょう。
どうしても社内の人間だけではわからない場合、コンペ参加社とは別の第三者内装会社様に依頼してにPM(プロジェクトマネージャー)としてコンペ段階から入ってもらうことも効果的です。
もちろんPM費はかかってきますが、余計なリスクをなくせることは余りあって魅力的です。

5. 契約周りで気をつけること

依頼先が正式に決まったらいよいよ契約を交わしましょう。
ここでも気をつけることがいくつかあります。
実際の事例をもとに見ていきましょう。

関わっている人物が一同に集う会を設ける

例えば新業態の場合とか大きい会社になると、法務や弁護士など色々と関わる人が多くなってくる可能性があります。
間に誰かが入り伝言ゲームのようになってしまうと、やり取りだけでも大きな時間を取られてしまう上に、それぞれの本来の意志が伝わりづらくなります。一度に集まる機会を設け、スムーズに話を進められるようにしましょう。

契約締結に時間がかかりすぎてしまった結果、プロジェクトの消滅という最悪の事態になってしまった事例を紹介します。

プロジェクト消滅にいたった事例

ある法人飲食店様から内装建築.comへ店舗のトータルデザインの依頼があり、飲食に強い内装会社様がコンペに参加することになりました。
内装建築.comからの参加内装会社様に依頼が決定。お互いにとって良いコンペ開催をしていただけたこともあり、モチベーション高くその後の修正等に臨む意気込みでいらっしゃいました。

ただしここから、契約進行が停滞し結局はプロジェクトごと無くなることに。

この依頼は施主様にとってブランディング面で非常に大きな役割をもつ店舗であったので、それまでとは違った契約書を制作する必要がありました。
デザイナー様・施主様側の担当者・法務・顧問弁護士・出店先SCの担当者など、登場人物が非常に多いうえに慣れていなかったこともあり、揉め事があったわけでもないのに契約の締結に長期間を要してしまいました
結局その間に出店先の条件が変わり契約できないことに。
もっとはやく進行できていれば。という悲しい事例です。

契約周りなど法務上のやり取りは、手戻しや確認で大きな時間を取られるのはご存知の通りかと思います。
登場人物が多くなればなるほどその時間は多くなってしまいますので、全員を集めて一気に進めてしまうなど工夫する必要が出てきます。

書面のやりとりは必ず着工前に!

「あとはもう書類の話だけだから!」と、しっかりとした契約前に着工をお願いする施主様と何度か出会ってきました。
契約前に着工することは、設計施工会社からするととても不安です。
工事の発注には、施主様が予算として提示した金額と同じだけの、内装会社様にとっても大きな金額が必要です。自社ですべてて用意する場合もあれば、案件や内装会社様の規模によっては借り入れをしなければならない場合もあります。
もしも、万が一の話ですが、契約せずに着工し途中で何かしらの事件があって案件が立ち消えになった場合、そのすべての負債を内装会社様が被るという自体になってしまう可能性があります。

これからパートナーとして末永くお付き合いをしていきたいのであれば。いい店舗を作りたいのであれば。安心して仕事ができるような関係性での誠実なお付き合いをお願いいたします

6. 工期中

コンペで上がってきたデザイン案をベストな形に調整し、内装会社様との契約まで済ませたら、あとはいよいよ実際の工事にはいります。

細かいコミュニケーションを怠らないこと

ここからはほとんど施工管理会社様にお任せし、職人さんたちに作り上げていただくことになります。とはいっても、何もせずにおまかせしていると出来上がってきたときにイメージと違ったということも
なるべくそういったことを起こさないためにも、こまめに施工現場とのコミュニケーションをとっておき、何かあったらすぐに相談してもらえるようにしておきましょう。
たまには現場を覗きに行き、ちょっとしたコミュニケーションとしてお菓子や飲み物などを差し入れすると「ただの施主」から関係性が一歩前進です!

物件オーナー側とのやりとり、施工の品質チェックや疑問に答えたりなど、実はやれることはたくさんあります。
良いお店をオープンするためにも、「細かすぎかな?」ってくらい能動的にコミュニケーションをとるようにしましょう。

7. おわりに

新規出店・改装にあたり、内装会社様に仕事を依頼する際に意識するべきことをざざっと書き出してみました。
施主でも内装会社でもない、第三者の中立な立場として数多くの案件に関わってきた内装建築.comだから書ける「こうすれば間違いないよ。」という情報です。

最後にもう一度、ここまでのすべての内容を箇条書きで纏めておきます。
すべて読んでくださった方も、ここから読み始めた方も、改めて目を通していただけると幸いです。

飲食店の設計施工依頼マニュアルまとめ
  1. 依頼前の準備編
    • お店の全体コンセプトを考え抜いておく
    • 物件の取得を済ませておく、少なくとも申し込んでおく
    • 提示可能な最大金額を予算に
    • 少なくとも平均以上の予算は用意すること
    • オープン三ヶ月前には設計施工の依頼を
  2. 依頼編
    • 依頼時期は出来る限り早く
    • ポイントを抑えた依頼を
    • 資料を多く用意する
    • コンペ社数は3社が理想
    • 何を優先するか社内で決めておく
    • 情報・コンペ期間を均等に
  3. コンペ編
    • 参加社の持つ能力を100%引き出せるような良質なコンペを開催すること
    • 同じ日に顔合わせ→同じ日にコンペがベスト
    • 各社の質問をオープンに
    • 提案資料は事前に指定
    • 質疑応答は積極的にする
    • 10万円ほどのコンペフィーを用意
    • 社長や上長など決定権のある人を同席させる
  4. 依頼先決定編
    • 適正価格から外れすぎると危険
  5. 契約周りで気をつけること
    • 関わっている人物が一同に集う会を設ける
    • 書面のやりとりは必ず着工前に
  6. 工期中
    • 細かいコミュニケーションを怠らないこと

以上を意識した設計施工の依頼をすれば、きっといい結果となってくれるはずです。
それでは。

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