初めての移転担当なら必ず見ておきたいオフィスデザインの基礎知識

オフィスデザインは会社が成長し規模が大きくなった際に、企業のブランディングのために非常に重要となります。またオフィスは従業員が1日を過ごす場所でもあり、快適にしていくためにもオフィスデザインは重要なのです。企業の顔ともなりえるオフィスがどのように作られるのか、今さら聞けない基礎知識を見ていきましょう。

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オフィスのデスクに並ぶパソコンとタブレット

1.そもそもオフィスデザインとは?

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オフィスの移転や改装の担当者に任命されたら、考えなければならないのがオフィスデザインです。しかしオフィスデザインは専門的な知識が多く、何から始めればよいのかわからない人も多いのではないでしょうか。

どのようにオフィスが作られていくのか、まずは言葉の意味やフローといった概要を掴んで、オフィスデザインとはどのようなものなのか見ていきましょう。

1-1 オフィスデザインとは?

一般的にオフィスデザインと呼ばれるものは、オフィス内装における設計のことを指します。オフィスデザイナーは単に意匠的なデザインをするだけではなく、従業員が働きやすいようなゾーニングやレイアウトを考え、オフィス家具や什器の選定・配置を行い、図面に落とし込んでいくのです。ゾーニングとは空間の目的を決めていくこと(執務スペース、休憩スペース、エントランスなど)であり、レイアウトとはその目的の決められた空間の中でどのように什器や家具を配置していくかということです。

この作業は設計者によって行われます。オフィスをつくる工程においては、設計=デザイン、設計者=デザイナーと考えてよいでしょう。

1-2 オフィスの施工

設計図面が完成したら今度はその図面をもとに内装を作り上げていきます。この作業は施工と呼ばれており、いわゆる現場の内装工事だけでなく、工事に必要となる職人や建材を手配したり、工程管理をしたりして工事が図面通りに適切なスケジュールで終わるように管理するのです。そのため施工会社は「施工管理会社」とも呼ばれます。

設計者は工事に直接関与するわけではありませんが、自分が行ったデザイン設計が図面通りに工事されているのか、施工会社を監理する役目もあるのです。これは「設計監理」と呼ばれる業務です。

また内装工事が開始されることを着工といい、その工事が完了することを竣工(しゅんこう)といいます。

他の多くの業種と同様にオフィスデザインでも、まずはどのようなものを作るかという設計図があり、それをもとに作業に入っていくのです。

1-3 オフィスデザインの定義は?

狭義でのオフィスデザインは、実際に内装のデザインや機能を図面に落としこむ設計者の作業のことを指します。一方で広義の意味ではデザインから内装工事までを一括でオフィスデザインと呼ぶ場合もあります。

2. オフィスデザインのポイント

ペンダントライトが象徴的なオフィス

近年GoogleやFacebookといったアメリカのIT企業に影響されて、日本でもデザイン性の高いオフィスが徐々に増えてきています。このような背景には従来の単に働く場所として考えられていたオフィスが、企業カルチャーの生成やリラックス効果によって、結果的に生産性が向上すると考えられ始めたからです。

それではそれらを実現するために必要なポイントを見ていきましょう。

2-1 コンセプト作成

まずはどのようなオフィスにしたいのかといった、オフィスデザインのコンセプトを作成していきましょう。

実際にオフィスデザインを行っていくのはオフィスデザイン事務所ですが、オフィスデザイナーに伝える用意をしておくのは非常に重要なことです。社員のワークスタイルやブランドイメージなど、自社で重視してくべき点を整理しておくとよいでしょう。

2-2 ゾーニング

コンセプトが決まれば、それに応じてオフィス空間の構成を考えていきます。

例えばデザイナーやエンジニアといったクリエイティブ系の人と営業の人が混在している企業であっても、優先事項によって空間の構成は変わってきます。集中した空間を作りたいのであれば、クリエイティブとビジネスを仕切るかもしれませんし、活発にコミュニケーションを取りたいのであれば、あえて同一の空間を作るかもしれません。また両立させたいのであれば、別途集中スペースを設ける必要があるかもしれません。

このようにゾーニング一つとっても、企業のコンセプトによって変化していくのです。

2-3 レイアウト

ゾーニングが定まれば、次は空間ごとにレイアウトを定めていきます。

特に執務エリアは従業員が普段仕事をする場でもあり、より慎重に検討をする必要があります。適切な通路幅を取り、社員の働きやすい導線づくりを心がけましょう。

2-4 執務スペースと来客スペースどちらに投資すべきか

オフィスデザインには来客者やメディアなどで対外的にブランディングを発信する側面と、執務スペースや休憩スペースなどの内部環境を整えて従業員のモチベーションを上昇させる側面を持っています。

これらはどちらも非常に大切な要素ですが、限られた予算の中で希望を全てを実現していくのは難しいでしょう。自社にとってどちらを優先していくべきなのか、しっかりと社内で話し合っておくとよいでしょう。

3. オフィスデザインするデザイン事務所とは?

白を基調としたオフィスデスク

オフィスデザインは自分でも行うことができますが、ほとんどの場合は専門家であるオフィスデザイン事務所に依頼することになります。オフィスデザイン事務所は一体どのような仕事をしているのでしょうか。

オフィスづくりのよきパートナーと出会うためにも、デザイン事務所がどのような仕事をしているのか見ていきましょう。

3-1 オフィスのデザインをするのはデザイン・設計事務所

オフィス内装のデザイン設計を行う会社はデザイン事務所や設計事務所と呼ばれます。このデザイン・設計事務所に所属しているデザイナー・設計者がオフィス内装のデザインや図面の作成を行います。その後作成した図面をもとに内装工事を行なうのが施工会社です。

またデザイン設計と施工を同じ会社内で行なう「設計施工」と呼ばれる会社もあります。一般的にオフィスの面積が300坪以下の場合は設計施工会社へ依頼、300〜500坪はケースバイケース、500坪以上は設計会社と施工会社を分離するパターンが多いです。

参考「設計」と「施工」は分けるべき?内装業者の正しい選び方

3-2 デザイン設計事務所の種類は様々

デザイン設計事務所と一言でまとめても様々な種類があり、その特徴はそれぞれ異なります。

オフィスを専門でやっている事務所もあれば、住宅や店舗などの様々なデザインや建築を並行して行っている事務所もあります。

デザイン設計事務所は大きな事務所もありますが、個人事業主や1~5人程度の比較的少人数の事務所も多いです。

4. オフィスデザインの流れ

カフェ風のオフィス

次にオフィス内装が実際にできあがるまでのプロセスを確認していきましょう。オフィスが完成するために、いつどこでどのような情報が必要か、完成までにどれくらいの期間がかかるのかをきちんと理解しておくことで、プロジェクトをスムーズに進めることができます。

4-1 要件定義

オフィスデザインを依頼する前に、まずは自社の中で予算や必要な機能、コンセプトなどの内容を固めていかなければなりません。その内容は要件と呼ばれオフィスデザインをする上で欠かせないものです。

オフィスデザイナーはその道のプロではありますが、依頼する企業自身のことは所属する従業員にしかわかりません。またオフィスは工事区分がビルによって異なり、それによって工事金額が大きく異なるので、あらかじめ確認しておいたほうがよいでしょう。

事前に要件を定義しておくことで、デザイナーの提案の質が上がり、その後の使い勝手も良くなるので、しっかりと準備するようにするとよいでしょう。

4-2 デザイナーとの打ち合わせ

要件が固まってきたら次はオフィスデザイン事務所と打ち合わせを行っていきます。提示した要件をもとに打ち合わせをしながら、要望の細かい内容をデザイナーに伝えていきます。

4-3 基本設計

打ち合わせした内容をもとに、オフィスデザイナーは10~14日ほどかけて、平面図やパースと呼ばれる3Dイメージ図を作成しオフィスデザインを提案します。当然はじめから提案内容と要望が一致することは難しいので、細かいすり合わせや追加の要望をデザイナーに伝え、その改善といった作業を繰り返して、より完成に近づけていきます。打ち合わせにかかる期間は最初の提案から1ヶ月ほどは見ておくとよいでしょう。

また複数のデザイン事務所に依頼をして、提案を比較することを「デザインコンペ」といいます。簡単なコンセプトやパースの提案までは無料で行ってくれるデザイン事務所が多く、提案された案を比較してデザイン事務所を選定していくことができます。

4-4 施工会社選定

施工会社はデザインを依頼したデザイン会社が紹介してくれるケースが多いでしょう。その後2~3社の施工会社に見積りを作成してもらい、金額を比較していきます。これを相見積もり(あいみつもり)、もしくは競合入札と呼びます。各社から出てくる見積りは最低でも1~2週間はかかり、期間に余裕持ったほうが見積もりの精度が上がり、金額も下がることが多いです。

4-5 着工

依頼する施工会社が決まったら、いよいよ工事が始まります。オフィスの内装工事には電気設備工事・給排水設備工事・ガラス工事・セキュリティ工事といった様々な工事項目があり、それぞれ別の業者や職人が担当するのです。施工管理会社はこれらの専門業者や職人をとりまとめ、予定通りに工事を進めるために全体の指揮をとります。

4-6 竣工・引渡し

工事が終了してオフィスに入居できる状態になったら、引き渡し検査を行います。図面通りにオフィスの内装が作られているかだけではなく、ドアや窓が開閉できるのか、スイッチやインターネット回線に異常がないか、通常営業を行うために必要なもの全てに問題がないことを確認し、サインをすれば引渡しとなります。

5. オフィスデザインにかかる費用

紙幣で作れられた家

それではオフィスデザインを依頼するには、一体どれくらいの費用が必要となるのでしょうか。あらかじめ計画していた予算と実際にかかる費用に大きな差が生まれないように、オフィスデザインにはどれくらいの費用がかかるのか知っておきましょう。

5-1 何にお金がかかるのか

デザイン事務所へ支払うお金

オフィスデザインにおけるデザイン設計料は、依頼するデザイン・設計事務所のクラスにより大きく異なりますが、一般的に以下の2つのパターンが利用されます。

ただしオフィスの広さや工事金額に関わらず、最低金額を定めている場合も多いので、規模の小さなオフィスデザインを依頼する場合は要確認しておきましょう。

①坪数×単価

オフィスの面積に応じてオフィスデザイン事務所ごとに設定した単価を掛け合わせて設計料を算出する方法です。

②工事費の10%前後

内装工事費に応じて設計料を算出する方法です。デザイン設計プランが固まらないと正確な工事費が分からないことの方が多いため、はじめの予算から設計デザイン費を算出するケースが多いです。

施工会社へ支払うお金

施工会社へ支払うお金は大きく設備工事費と内装工事費の2つに分けられます。設備工事とは空調や電気、通信回線などのオフィスの通常営業に欠かせない設備の工事で、内装工事費とはパーティションやガラス、ブラインド、床や天井などの様々な工事のことを指します。またオフィス家具を施工会社に依頼した場合はそれらも別途支払う必要があります。

ある程度デザイン性の高いオフィスをつくる場合の工事費の目安はおよそ坪15~25万円と言われています。ただしこれはオフィスの大きさや工事区分によっても違うので、あくまで参考程度に考えるようにしましょう。

5-2 支払いタイミング

デザイン設計料や工事費は金額が大きいため、分割で支払うのが一般的です。支払いのタイミングは依頼するデザイン事務所や施工会社により様々ですが、デザイン設計費は基本設計終了時に50%、引渡し時に50%、工事費は着工時50%、引渡し時50%といった分け方が一般的です。

支払いが遅れた場合は設計や施工の業務がストップして、営業開始日が遅れることになりかねないので、支払が送れないように支払日をあらかじめ必ず確認するようにしましょう。

6. オフィスデザイン事務所を選定する基準

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自社に最適なデザイン設計事務所は、どのような基準をもとに選定すればよいのでしょうか。前述したようにオフィスデザイナーには様々なタイプがいますが、有名であれば必ず理想のオフィスづくりをしてくれるかといえば、そういうわけではありません。自社に最適なデザイナーとなりうるポイントを詳しく見ていきましょう。

6-1 求めるニーズが合致しているか

依頼主にとってもオフィスデザイン事務所・施工会社にとっても、お互いを魅力的に感じてニーズを満たしているのかは非常に大切です。

仕事の忙しい時期であれば、物理的に丁寧な対応やスピード感をもった仕事をするのが難しくなります。また大きな事務所に対してオフィスデザインを依頼した場合は、内容によっては経験の浅い若手を担当に割り当てられてしまう可能性もありえるのです。

オフィスデザイナーと施主どちらのニーズも一致していることが必要となります。

6-2 得意なデザイン・テイスト

デザイン設計事務所にはそれぞれ得意とする業種・業態があります。

「なんでもできます!」と高らかに宣言しているオフィスデザイン事務所もありますが、基本的にはどのデザイン事務所も独自のカラーを持っています。ホームページやメディアなどで過去の実績を見て、自分のイメージに合うデザイン事務所を選ぶようにしましょう。

6-3 マッチングサイトを利用する

一番よい選択肢はマッチングサイトを利用することです。デザイン事務所のホームページでは、よい面しか触れていないため、実際に仕事をしてみなければその会社の質がわかりません。

その点各会社ごとの特徴や仕事の質を把握しているマッチングサイトは、優れた仕組みであるといえるのです。オフィスデザイン事務所を決め兼ねているのであれば、ぜひ一度問い合わせてみるとよいでしょう。

7. まとめ

オフィスの移転・改装は企業の従業員誰もが関わる一大イベントです。しかし失敗できない状況であるにも関わらず、多くの人にとっては初めて経験することが多いのです。

特に専門性の高いオフィスデザインの分野では情報格差が著しく、デザイン事務所や施工会社にパワーバランスが偏りがちです。一度オフィスデザインとはどのようなものなのかを整理して理想のオフィスづくりを目指しましょう。

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