1. 設計マニュアルとは
店舗内装の設計マニュアルとは多店舗展開するうえで、全てのベースとなる設計指針書のことです。設計マニュアルは他に設計指針書や標準デザイン、レギュレーションと呼ばれることもあります。
店舗の内装で使用する素材や色使い、レイアウトなどに様々な決まりを設けることで、新規出店や改装の際により効率よくプロジェクトを進めることができます。どのラインまでを決めていれば設計マニュアルと呼べるのかというような基準はありません。専門家と話し合って、自社に最適なものを作成していきましょう。
2. 設計マニュアルを作成するメリット
それでは設計マニュアルを作成することでどのようにプロジェクトを効率化することができるのでしょうか。具体的なメリットを見ていきましょう。
2-1 ブランディング効果がある
店舗を運営している企業には他社との差別化をはかり、ブランディングを注力している企業も多いのではないでしょうか。企業のオリジナリティやコンセプトを視覚的に訴えるのが店舗のデザインと言えます。
ロゴやサインだけではなく店舗全体のデザインを統一していくことで、どの店舗を見てもお客さんに認知してもらうことができるのです。このようなブランディグ戦略は再度来店することを促し、店舗の長期的な利益にもつながっていくでしょう。
2-2 設計がスムーズにいく
新たな店舗を出店するたびに「客席レイアウトはどうするか?」「サインの位置は?」「厨房の配置は?」といったことを決めていくのは多大な手間がかかります。しかし一度「設計マニュアル」として内装の仕様を決めてしまえば、打ち合わせの手間を大幅に削減することができます。また設計や打ち合わせの手間が少なくすむので、その分設計料を安くすることができるのです。
2-3 同じ質で店舗を出店できる
店舗を複数出店していると全ての店舗を同じ内装会社に依頼していくのが難しくなってしまうでしょう。しかし複数の会社に設計を依頼してしまうと、いくら同じ店舗を参考にしていてもデザインや使い勝手が微妙に異なってしまうのです。設計マニュアルを作成することで、このような設計者通しの微妙な感覚のズレをなくし、どの店舗でも同じ質で設計することができるのです。
2-4 工事費の予測が立てやすい
設計のマニュアルが決まっていると、使用する素材や什器が決まっていきます。常に同じものを使うことになるので、その時々によって工事金額が変動せず、ある程度の予測を立てることができます。さらには複数店舗まとめて発注することができれば、その分コストを下げることができる場合もあるでしょう。
2-5 物件の選定がスムーズになる
設計マニュアルは店舗のレイアウトや設備面で様々なレギュレーションが発生します。それによって物件の大きさ・形態や区画の形も絞られてくるのです。候補物件として出てくる数自体は少なくなりますが、設計難易度の高い物件はなくなり、物件ごとの工事金額を安定化することができます。
3. 設計マニュアル作成フロー
それでは実際に設計マニュアルを作成する際は、どのようなフローで進めていくのでしょうか。一般的な店舗の出店とは店舗マニュアルの作成フローを確認していきましょう。
3-1 依頼する条件を確定する
「ここまでの資料が揃っていれば設計マニュアルです」という明確な基準はありません。ですから設計マニュアルをどれほど作りこんでいくかは会社によって異なります。
店舗のオペレーションを分析して細部まで詰めるのか、様々な物件形態に合わせて展開できるようにするのか、単に仮想物件での詳細図面を作成するだけなのか。自社に最適なマニュアルのあり方を考え、専門家と内容を詰めていきましょう。
3-2 設計料を見積もる
設計マニュアルの内容が固まったら設計料を見積もってもらいましょう。一般的な店舗デザインとは異なるので、坪単価や施工金額の◯◯%といった一般的な設計料の見積もり方はできません。基本設計でいくら、物件形態ごとにいくらというようにかかる人工を参考にしながら成果物ごとに積算してもらいましょう。
この際にどんな内容のプランをいつまでに完成させるのかは、事前にしっかりと決めておく必要があります。設計マニュアルは詰めていけば終わりがないので、ダラダラと進んでしまいがちです。そうなれば両者の人的コストはかかってしまいますし、何度もやり直しがあると設計料を追加で請求されることもありえるでしょう。問題を事前に回避するためにも、事前に内容を決めておくことは大切なのです。
3-3 設計者を選定する
依頼する条件が固まったら、一緒に作り上げていくパートナーとなる設計者を選びましょう。今までの付き合いのある会社でもよいですが、長い期間使用するマニュアルとなりますので、コンペ形式で複数の会社から提案をもらって選ぶのもよいかもしれません。一般的な店舗の設計と業務が異なるので、チェーン店のデザインを手掛けた経験のある人がいいでしょう。
3-4 マニュアルの詳細を詰めていく
設計者が決まりではなく、ここからが本番です。事前に定めた期限に向けてプランの内容を詰めていきます。「◯◯の場合はどうするか」「物件がXXなら◯◯しよう」と複数のパターンを想定して調整を加えていきましょう。ベースとなる案ができたら、大量発注することで価格を抑えれるかどうかも念頭に置いて、使用する壁紙や床材などの素材を決定していき、納得するまでとことん詰めていきます。
4. まとめ
どんなに詰めきったとしても多くの店舗を展開をしていく中では、イレギュラーなことが発生したり、物件の状態がそれまでと大きく異なるなど、設計マニュアルの指針が合わない点も必ず出てきます。
そのような運用していく中で気づいた改善点を反映させ、よりよいものにしていいくことが設計マニュアルを運用するうえで最も大切です。そうして改善を繰り返していくことで、大手のチェーン店のようにどのような物件や立地でもほとんどの人の力をかけずに出店することが可能になるのです。