株式会社シップス「あくまでシップスらしさをなくさない」

今年、創業40周年を迎えた株式会社シップス。「服は自分を表現するツール」そう語る店舗開発担当者・篠田氏にお話を伺いました。

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シップス・篠田氏

株式会社シップスで店舗開発を務める篠田氏

ーまず、篠田さんご自身についてお聞きします。

ーなぜ店舗開発にかかわるようになったのか。その経緯をお伺いできますでしょうか。

私が店舗開発という仕事にかかわるようになったきっかけは父にあります。父は公務員で、公共事業の担当をしていて、幼いころから私は建築という分野に触れることができましたし、建築というのが好きでした。その影響があって、大学は建築関係の京都の大学に進学しました。親からの影響で大学に進学し同じく公務員という道を歩もうと思ったこともあったのですが、自分はやはりアパレル、服というものが好きで、特にその服を売る商環境いわゆる「ショップ」を作っていきたいという気持ちが大学在学中に強くなっていきました。親への反発というのもあったのですが(笑)

そこで、そういった店舗開発の分野に携わるためのステップアップとして、大学在学中にSHIPS京都店にアルバイトとして入社し、卒業と同時に現在の店舗開発の部署に配属になって、今に至ります。

ー店舗についてお聞きします。

ー店舗づくりで重視されていることは何ですか?

店舗っていうのはあくまで「売り場」です。その「売り場」で商品がいかに映えるか、ということを大切にしています。店の内装と洋服がケンカしないようにするということですね。言葉では説明しづらいのですが(笑)

店舗の外観としましては、「アイキャッチ―」であること、そして「入りやすい店舗」である事、そして「ブランドの訴求」が大切になってくるかと思いますね。「ブランドの訴求」に関しては、SHIPSのレギュラー店舗はテントを設置したりして、アイコン(象徴)的なものを作り上げて、全店舗共通意匠として設置してます。

お客様がぬくもりを感じられる店装

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ー店舗づくりでここだけは譲れないということは何ですか?

「お客様がぬくもりを感じられる店装」というのをテーマに木をふんだんに使うなどして店舗づくりをしています。お客様は店舗に入って内装を詳細に見たりするわけではありませんから、店舗に1歩入った時のインスピレーションを大事にしています。

私が入社した10年くらい前は、時代の流れもあってSHIPSの店装もシャープなものが多かったのですが、7,8年くらい前にこの店装はSHIPSらしくないのではないかというところの見直しがあって、現在の「SHIPSらしい」店装へと生まれ変わりました。変化はもちろん必要ですが、SHIPSという店舗において、ぶれないものをつくっていきたいと考えています。

ー篠田さんにとっての店舗開発の面白みとは何ですか?

やはり店舗開発の面白みは店舗が出来上がった時の達成感ですね。これは10年たっても全く変わりません。無事工事や商品陳列が完了して、オープンの朝を迎えると達成感を感じますし、この仕事をやってて良かったなと感じますね。

また、近年は店舗の開店後の運営の部分に面白みを感じるようになりました。入社当初は店舗の立ち上げで仕事が終わるので、意識としてオープン時点でいったん区切れていたのですが、年月が経つにつれてランニングの部分を考えて設計をしていく意識がでてきて、面白みを感じるようになりました。

ー店舗づくりで大変なこととは?

検証のみで判断を重ねていくということがすごく大変です。例えば、店舗出店の際には図面を一枚一枚チェックしていくのですが、テーブルの高さが1cm変わるとどうなるか、などの検証をしていく時に、50cmのテーブルと51cmのテーブルを実際に作って比較したりすることはできないというところですね。加えて、店舗とは人と作っていくものなので、工事の工程管理が思い通りにいかないなんてこともありますね。

仕事を超えた信頼関係を作り上げていきたい

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ーデザイナーや施工会社を探す時に重視していることは何ですか?

デザイナーさんだと、どこまでビジネスの感覚をもっているかということですね。もちろん、デザイナーさんにとっては一つの芸術作品を作り上げるという意識があって当然だと思うのですが、それ以前に商業空間を作り上げるという意識が必要なのだと思います。

施工会社さんとは基本的に図面でのやり取りになるのですが、その図面にかけない意図をどう汲み取ってくれるか、ということを重視しています。

個人的な意見にはなるんですが、業者さんとは仕事を超えた信頼関係を作り上げていきたいと考えています。

ー店舗開発に関する情報収集はどのように行っていますか?

情報の収集としては、もちろん完成した店舗を見に行ったりしてリサーチはしているのですが、その前段階、店舗が出来上がる前でのリサーチというのはできていないですね。今後はそこを強めて、業界内での横のつながりを強めていきたいとは考えています。

また、情報収集という点に関しては、あまりアパレル業界や内装業界に囚われたくないという気持ちがあるので、ほかの音楽・広告・Webなどの分野とのコミュニケーションをとるように心がけています。そこで得た情報を自分の中で処理し、店舗開発に活かしていきたいと考えています。

あくまで「SHIPSらしさ」をなくさない

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ー新ブランドの出店ではどのようなことを意識しますか?

直近ではSHIPS Daysという新ブランドの立ち上げを行ったのですが、ブランドディレクターと共同して約1年かけてどういった店装にするかのイメージを作り上げていました。やはりここで意識するのはあくまで「SHIPSらしさ」をなくさないことですね。他社さんではブランドを作ってそれを一人歩きさせていくという考えが強いと思うのですが、弊社は、SHIPS本体に付帯するブランドの位置づけになっていますので、その軸から外れていかないということに重きを置いています。

ーずばり、SHIPSらしさとは?

聞かれると思いました(笑)デザイナーさんにもよく聞かれるんですが、実はなかなか言葉にできないところなんですよね。SHIPSのサブタイトルに「スタイリッシュスタンダード」というものを掲げていて「定番だけど新鮮に、かっこよく」という意味が含まれています。これがSHIPSらしさを表す一つの言葉ではないかと思います。「定番」の中にはお客様に対する安心感というのも含まれていますね。

ーアパレル業界のこれからについてお伺いできますでしょうか?

近年はECによって、実店舗に行かなくても何でも買える時代になり、人と人とのつながりが希薄になっていっていることを感じます。弊社としては、そういった時代だからこそ店舗での人と人とのつながりを大切にし、アナログ的な部分を大切にしていきたいと考えています。私個人としましても、店舗開発という視点から、コミュニケーションの場を創り上げる仕事をしていきたいと考えています。

また、所詮「服」ではあるのですが、「服」とは自分を表現するものでもあります。朝起きてから、その日着る服を選びますよね。その選択には何かしら理由があるわけです。私たちは、そういった部分での意識、リテラシーを高めていきたいと考えています。自分を表現するツールである「服」の意識を変えることで、自分を変えるツールにもなるのではないでしょうか。

そのために、私は店舗開発として、そこのインフラを整備してきたいと思います。「この場所にまた来たい」お客様にはそう感じてもらいたいですよね。そこに、スタッフの働きやすさというのも加味して店舗づくりをしていきたいですね。

株式会社シップス

篠田智史

昭和50年創業。従業員約500名。ファッションの中で「変わる部分」「変わらない部分」を見極め、伝統的な要素を今日的に表現した「スタイリッシュスタンダード」を軸とし、今年で創業40周年を迎える。その名の由来である、”大海原へと漕ぎ出す船=シップス(SHIPS)”の通り、新しいスタンダードを求めて今も躍進を続けている。

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