1. 建設業許可を取得する目的
内装工事会社は会社の規模や扱う案件の業種、工事費用の価格帯には様々な種類があり、どのような工事を得意としているのかは会社それぞれに特徴があります。少ない数の高単価の内装工事を行う会社もあれば、数多くの低単価の内装工事を行う会社もあるわけです。
こうした様々な会社がある中でも、施工の品質を守り手抜き工事や粗雑工事といった不正工事を減らすことで、発注者を保護することを目的として建設業許可があるのです。またそれは建設業の発展を促し、社会全体の利益へとつながるのです。
2. 内装会社が建設業許可を取得するメリット
それでは内装会社が建設業許可を取得することで得られるメリットには、どのようなものがあるのでしょうか。具体的に見ていきましょう。
2-1 高単価の案件が受注可能
国土交通省によると、内装工事会社は建設業法第3条に基づいて、建設業の許可を受けなければなりませんが、「軽微な建設工事」のみを請け負う場合については、この限りではないとしています。
ここでいう軽微な建設工事には、1500万未満の建築一式工事と500万円未満の大工工事や左官工事と言った専門工事がこれに該当します。
2-2 社会的信頼性の向上
建設業許可を取得することで、社会的に信頼されることにつながります。
大きなお金が動くため、発注先の倒産や工事費の持ち逃げを避けるために、内装会社の選定には非常に慎重になります。そのため大手の内装会社や施主の中には、工事を発注する際に建設業許可を持っていることを必須の条件としている会社もあります。
様々な条件をクリアした会社しか手に入れることのできない建設業許可は、社会的な信頼を得るためには非常に効果的なのです。
こうして得られた社会的信頼は銀行融資を受けることを有利に進めることにもつながるのです。
3. 建設業許可の種類
一口に建設業許可といっても受注できる金額や営業所の場所、工事の種別によって様々な種類があります。自分が取得しなければいけない許可の種類を、しっかりと見定めるようにしましょう。
3-1 一般建設業許可と特定建設業許可の違い
建設業の許可は下請けに出す工事の規模によって「一般建設業」と「特定建設業」の2つの種類があります。それぞれの具体的な条件を見ていきましょう。
一般建設業許可
一件あたりの請負金額が1500万円以上を超える工事を受注する場合は、元請け下請けに関わらず一般建設業許可が必要となります。
下請け業者に発注せずに自社内で全ての工事を行うことができるのであれば、特定建設業許可は必要ありません。
特定建設業許可
発注者から直接工事を請負い、下請けに出す工事の金額が4000万円(建築一式工事の場合は6000万円)以上の場合は、特定建設業許可が必要となります。
一件あたりの工事の規模が大きくなっても、下請けに出す工事費が4000万円(建築一式工事の場合は6000万円)未満であれば、特定建設業許可の取得は必要ないのです。
3-2 大臣許可と知事許可の違い
建設業の許可は営業所の数と場所によって「大臣許可」と「知事許可」のどちらを取得すればよいのか違います。それぞれの具体的な条件を見ていきましょう。
大臣許可
複数の都道府県に営業所を持っている場合は大臣許可を取得します。
知事許可
営業所が一箇所のみ、あるいは同一都道府県内に複数ある場合は知事許可を取得します。
営業所とは
建設業許可でいう営業所とは、建設工事の請負契約を締結する事務所のことを指します。登記上の本店や支店であっても、その場で契約を締結できる機能が備わっていない場合は営業所として数えられません。
3-3 建設業の業種別許可
建設業は2の一式工事と27の専門工事の計29種類に分類されています。建設業許可の種類にはどのようなものがあるか確認していきましょう。
一式工事
- 土木一式工事
- 建築一式工事
専門工事
- 大工工事
- 左官工事
- とび・土工・コンクリート工事
- 石工事
- 屋根工事
- 電気工事
- 管工事
- タイル・れんが・ブロック工事
- 鋼構造物工事
- 鉄筋工事
- ほ装工事
- しゅんせつ工事
- 板金工事
- ガラス工事
- 塗装工事
- 防水工事
- 内装仕上工事
- 機械器具設置工事
- 熱絶縁工事
- 電気通信工事
- 造園工事
- さく井工事
- 建具工事
- 水道施設工事
- 消防施設工事
- 清掃施設工事
- 解体工事
4. 建設業許可の取得要件
建設業許可を取得して会社として信頼に足ると認められるためには、様々な要件を満たしていなければなりません。建設業法で定められている要件には、実際にどのようなものがあるのか見ていきましょう。
4-1 経営業務の管理責任者としての経験がある者を有していること
まず第一に個人法人問わず、営業所に常勤の経営業務の責任者がいることがあげられます。
建設業の経営は他と比較して特殊性の高い業種であるといえます。建築物はその場での売り買いだけではなく、短くて数年、長いものでは何十年もの間利用されるものです。さらに人の命を預かるものでもありますから、建設業者は長年に渡って建築物の維持・回復に努めなければならないのです。
ですから簡単に会社が倒産しないために、建設業者には長年に渡って会社を経営していく力が求められ、そのために建設業者経営の専門家が必要となるのです。その経営の専門家は経営業務の管理責任者と呼ばれ、必要な条件は以下の通りです。
経営業務の管理責任者の要件
(イ)許可を受けようとする建設業に関し、5年以上経営業務の管理責任者としての経験を有していること。
(ロ)許可を受けようとする建設業以外の建設業に関し、7年以上経営業務の管理責任者としての経験を有していること。
(ハ)許可を受けようとする建設業に関し、経営業務管理責任者に準ずる地位にあって次のいずれかの経験を有していること。
(a)経営業務管の執行に関して、取締役会の決議を経て取締役会又は代表取締役から具体的な権限委譲を受け、かつ、その権限に基づき、執行役員等として5年以上建設業の経営業務を総合的に管理した経験
(b)7年以上経営業務を補佐した経験
(ハ)の要件を満たしているかどうかは、個々のケースによって異なります。個別で審査を受ける必要があるので、取得を目指す際は許可行政庁にあらかじめ相談をしておきましょう。
またここでいう法人の役員とは次の者を指し、監査役や会計参与、監事、事務局長等は役員に含みません。
法人の役員
- 株式会社又は有限会社の取締役
- 指名委員会等設置会社の執行役
- 持分会社の業務を執行する社員
- 法人格のある各種の組合等の理事
- 取締役や執行役、業務を執行する社員に準ずる地位にあって、許可を受けようとする建設業の経営業務の執行に関し、取締役会の決議を経て取締役会又は代表取締役から具体的な権限移譲を受けた執行役員等
4-2 専任技術者の設置
建設業を継続的に行っていくためには、経営の知識と同様に建設業に関する専門知識が必要となります。
受発注や見積書の作成といった建設業の実務は各営業所で行われることが多いことから、各営業所ごとに建設業に関する常勤の専門家を設置しなければならないとされています。この専門家を専任技術者と呼びます。
専任技術者に求められる要件は、一般建設業許可・特定建設業許可どちらを取得するのかによっても異なります。それぞれに必要な資格や経験を見ていきましょう。
一般建設業の許可
[1]-1 指定学科修了者で高卒後5年以上若しくは大卒後3年以上の実務の経験を有する者
許可を受けようとする建設業に係る建設工事に関して、高校卒業後5年以上若しくは大学卒業後3年以上の実務経験を有し、かつ、それぞれ在学中に許可を受けようとする建設業に係る建設工事ごとに指定された学科(指定学科)を修めている者
[1]-2 指定学科修了者で専門学校卒業後5年以上実務の経験を有する者又は専門学校卒業後3年以上実務の経験を有する者で専門士若しくは高度専門士を称する者
許可を受けようとする建設業に係る建設工事に関して、専門学校後5年以上の実務経験を有し、かつ、在学中に許可を受けようとする建設業に係る建設工事ごとに指定された学科(指定学科)を修めている者
許可を受けようとする建設業に係る建設工事に関して、専門学校後3年以上の実務経験を有し、かつ、在学中に許可を受けようとする建設業に係る建設工事ごとに指定された学科(指定学科)を修めている者のうち、専門士又は高度専門士を称するもの
[2] 許可を受けようとする建設業に係る建設工事に関して、10年以上実務の経験を有する者
[3]-1 国家資格者
[3]-2 複数業種に係る実務経験を有する者
特定建設業の許可
[1] 国家資格者
[2] 指導監督的実務経験を有する者
前述の【一般建設業の許可を受けようとする場合】の専任技術者要件を満たしている者で、かつ、許可を受けようとする建設業に関して、発注者から直接請け負い、その請負代金の額が4500万円以上であるものについて2年以上指導監督的な実務経験を有する者
[3] 大臣特別認定者:建設省告示第128号(平成元年1月30日)の対象者
指定建設業7業種に関して、過去に特別認定講習を受け、当該講習の効果評定に合格した者若しくは国土交通大臣が定める考査に合格した者
4-3 誠実性
請負契約の締結やその履行に際して、誠実でなければなりません。不正や不誠実な取引が行われることが明らかな場合は、建設業を営むことができません。これは許可の対象となる法人や個人だけではなく、建設業の営業取引において重要な地位にある役員等についても同様です。
4-4 財産的基礎等
建設業許可を取得するためには、一定の財産を保持していることも基準となります。これを財産的基礎と呼びます。
建設業は工事を請け負う際に、資材の調達や職人の手配といった多額の金額が動き、営業活動を行うためにも費用がかかる業種であるため、一定の資金を保持しておかなければならないのです。つまり請け負える工事の金額に応じて、資金を持っている必要があります。
一般建設業許可よりも特定建設業許可の方が、財産的基礎等の要件が厳しく設定されています。特定建設業許可の方が大きな金額の工事を請け負うことや下請けに工事を発注し支払いが発生することなどが理由にあげられます。
詳しい要件は以下の通りです。
一般建設業
次のいずれかに該当すること。
- 自己資本が500万円以上であること
- 500万円以上の資金調達能力を有すること
- 許可申請直前の過去5年間許可を受けて継続して営業した実績を有すること
特定建設業
次のすべてに該当すること。
- 欠損の額が資本金の20%を超えていないこと
- 流動比率が75%以上であること
- 資本金の額が2000万円以上であり、かつ、自己資本の額が4000万円以上であること
4-5 欠格要件に該当しないこと
建設業許可の申請書や添付資料の中に、虚偽の記載や重大な事実の漏れがあった場合は許可がおりません。また許可の申請者やその役員、あるいは令第3条に規定する使用人が欠格要件に1つでも該当する場合に許可は行われません。
欠格要件
[1]成年被後見人若しくは被保佐人又は破産者で復権を得ないもの
[2]第29条第1項第五号又は第六号に該当することにより一般建設業の許可又は特定建設業の許可を取り消され、その取消しの日から5年を経過しない者
[3]第29条第1項第五号又は第六号に該当するとして一般建設業の許可又は特定建設業の許可の取消しの処分に係る行政手続法第15条の規定による通知があつた日から当該処分があつた日又は処分をしないことの決定があつた日までの間に第12条第五号に該当する旨の同条の規定による届出をした者で当該届出の日から5年を経過しないもの
[4]前号に規定する期間内に第12条第五号に該当する旨の同条の規定による届出があつた場合において、前号の通知の日前60日以内に当該届出に係る法人の役員等若しくは政令で定める使用人であつた者又は当該届出に係る個人の政令で定める使用人であつた者で、当該届出の日から5年を経過しないもの
[5]第28条第3項又は第5項の規定により営業の停止を命ぜられ、その停止の期間が経過しない者
[6]許可を受けようとする建設業について第29条の4の規定により営業を禁止され、その禁止の期間が経過しない者
[7]禁錮以上の刑に処せられ、その刑の執行を終わり、又はその刑の執行を受けることがなくなつた日から5年を経過しない者
[8]この法律、建設工事の施工若しくは建設工事に従事する労働者の使用に関する法令の規定で政令で定めるもの若しくは暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律の規定(同法第32条の3第7項及び第32条の11第1項の規定を除く。)に違反したことにより、又は刑法第204条、第206条、第208条、第208条の3、第222条若しくは第247条の罪若しくは暴力行為等処罰に関する法律の罪を犯したことにより、罰金の刑に処せられ、その刑の執行を終わり、又はその刑の執行を受けることがなくなつた日から5年を経過しない者
[9]暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律第2条第六号に規定する暴力団員又は同号に規定する暴力団員でなくなった日から5年を経過しない者([13]において「暴力団員等」という。)
[10]営業に関し成年者と同一の能力を有しない未成年者でその法定代理人が前各号又は次号(法人でその役員等のうちに第一号から第四号まで又は第六号から前号までのいずれかに該当する者のあるものにかかる部分に限る)のいずれかに該当するもの
[11]法人でその役員等又は政令で定める使用人のうちに、第一号から第四号まで又は第六号から第九号までのいずれかに該当する者(第二号に該当する者についてはその者が第29条の規定により許可を取り消される以前から、第三号又は第四号に該当する者についてはその者が第12条第五号に該当する旨の同条の規定による届出がされる以前から、第六号に該当する者についてはその者が第29条の4の規定により営業を禁止される以前から、建設業者である当該法人の役員等又は政令で定める使用人であつた者を除く。)のあるもの
[12]個人で政令で定める使用人のうちに、第一号から第四号まで又は第六号から第九号までのいずれかに該当する者(第二号に該当する者についてはその者が第29条の規定により許可を取り消される以前から、第三号又は第四号に該当する者についてはその者が第12条第五号に該当する旨の同条の規定による届出がされる以前から、第六号に該当する者についてはその者が第29条の四の規定により営業を禁止される以前から、建設業者である当該個人の政令で定める使用人であつた者を除く。)のあるもの
[13]暴力団員等がその事業活動を支配する者
5. 建設業許可の申請フロー
ここまで建設業許可の目的や種類、要件などについて見てきました。では実際に建設業許可を取得するためにはどのようにすればよいのか、申請のフローやスケジュールについて詳しく見ていきましょう。
5-1 建設業許可の要件を満たしているかチェック
まず初めにやらなければいけないのが、建設業許可を取得する要件を満たしているのかを確認することです。当然全ての項目をクリアしていかなければ、建設業許可の申請をすることができません。
上記で見てきたチェック項目を全て満たしているのか今一度確認しましょう。
5-2 建設業許可申請書および添付書類の作成・提出
建設業許可取得の要件を満たしていることを確認したら、許可申請書や法定書類などの添付書類、要件を満たしているのかを客観的に裏付ける確認書類を作成していかなければなりません。
申請に必要な書類は個人・法人や許可行政庁によって異なります。各行政許可庁の手引を参考にして必要資料を作成・提出しましょう。
建設業許可を新規で取得するための費用
建設業許可を取得するには、手数料の納入が必要となります。納入に必要な金額は以下のとおりです。
新規の申請でかかる費用
- 都道府県知事許可
- 9万円
- 国土交通大臣許可
- 15万円
この金額に加えて各種証明書の発行などの諸経費(数千円程度)や書類提出を行政書士などに依頼する場合はさらに代行手数料(10~20万円程度)がかかります。
5-3 審査・許可
建設業許可の提出書類が受理されれば、審査に入ります。書類の不備・再提出などがなく無事審査が通れば、建設業許可を取得となります。
建設業許可を申請をしてから許可が出るまでの日数
申請をしてから許可がおりるまでの日数は、行政許可庁によって異なりますが、都道府県知事許可で約45日、国土交通大臣許可で約120日程度かかります。
申請後に許可証が手元に届くまでの期間
- 都道府県知事許可
- 約45日
- 国土交通大臣許可
- 約120日
6. まとめ
建設業許可の取得は受注する案件の幅が広がることができるため、内装会社にとっては非常に大きな出来事であるといえます。取得するための条件が厳しく、仕組みも複雑ではありますが、様々な条件をクリアした証でもある建設業許可は、対外的にも非常に信頼されるのです。