株式会社グローバルダイニング「現場の従業員と設計者のマインド共有が強み」

自社内に設計部兼店舗開発の部署を設け、独自の空間作りに徹底的なこだわりを持つグローバルダイニングでは有能な設計者を多数輩出してきた。「グローバルダイニングDNA」を継ぐ者のひとりとして、今まさに活躍している樋口琢匠氏に話を伺ってきました。

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グローバルダイニング・樋口氏

株式会社グローバルダイニングで店舗開発を担当する樋口氏

ーグローバルダイニングに入社したきっかけは何ですか?

学校を卒業後、設計事務所にて経験を積み、25歳で独立を目指しフリーランスとして活動していた時期がありました。当時は若かったこともあり、何でもできると思って勢いで世に飛び出したのですが、設計に関する知識があっても、経営に関する知識は全くありませんでした。特に飲食店については自分自身が何も知らないということに気付き、1年ほどで活動を休止することにしました。店としての箱はつくれても、実際にその空間でどんな会話がなされているのか、あるいはオペレーションの部分など、実際にそのお店を利用する人達の気持ちはわからなかったんですね。

そこで、実際にレストランの現場に入り飲食店のことを学ぼうと思い、グローバルダイニングに入社しました。グローバルダイニングはコンセプトレストランを創るデザイナーが内製化されている会社の走りだったので、入社以前から興味がありました。 今までと全く異なる職種でアルバイトとして挑戦をし、実力主義のグローバルダイニングで能力があれば上に行けると信じ、マネージャーも経験しました。

今ではその現場を知るという経験が僕の一番の強みになっています。現場での経験がものづくりを変えたというのは大きいですね。かっこいい店を作れる人は多くいますが、中身を知った上での提案ができる人はなかなかいないと思うので。

ー店舗開発の特徴は何ですか?

やはり自社内に設計者を抱えているとことですね。グローバルダイニングの設計者は自社の店舗しか設計をすることはないので、一つの店舗にかける密度が高く、素材やパーツ・納まりなど、細部に踏み込んで取り組むことができます。 また、企画が立ち上がった段階から設計者も店作りに携わることができるので、立地や店舗イメージ、その店舗の持つ可能性など、核になる部分から考える事ができるのは非常に面白みがあります。飲食店を運営しているからこそ持っているノウハウや実際のオペレーション、現場の声、実際に起きている現象をリアルタイムで反映することができます。

以前所属していた会社で設計者として店舗開発の方とやりとりをしていた頃は、ある程度会社の企画があり、業態、客単価、席数などはあらかじめ決まっていました。ですから、デザイナーの主な仕事は意匠デザインを決めたり、使用する材料を選定したりすることでした。

グローバルダイニングの場合は、客単価や席数を決める時、どういう業態でどういうイメージを作るかというデザイン先行型で進め、それに合う客単価や席数で作っていくというような逆説的な方法を取ることがあります。 デザイナー自身も実際の店舗の経営や運営を一緒にやっていて、自分がデザインと設計をした店舗のデータを集めて検証できるからこそ、デザインを優先できるんだと思います。

失敗が蓄積され、それらを改善していく中で会社として独自の進化を遂げてきた

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ー店舗づくりのこだわりは何ですか?

店舗づくりのノウハウの改善に日々取り組んでいるところですね。会社が今年で43周年(2015年11月現在)を迎えたのですが、社長の歴史が会社の歴史と言っていいほど、社長自身が全ての店舗作りに携わってきています。店舗数が増えるにつれ、失敗が蓄積され、それらを改善していく中で会社として独自の進化をしてきました。

店舗を運営していく上で、設備を非常に意識した設計ができるようになりました。工事に関しては施工管理会社に委託して、その会社のノウハウに頼るのが一般的だと思うのですが、当社はそうではありません。新店を作る際は、空調や電気、ガス、水道など様々な分野の工事を分離発注することが多いんですね。自分たちでも各分野においてこだわりっていくことで、当社独自のノウハウを貯めていき、改善することができます。

また、独自のノウハウという点ではオペレーションの部分にもあります。現場で働く従業員が店舗を設計者の意図とは別の使い方をすることもあれば、逆に自分の意図していなかった使われ方がされることで良いこともあるので、それに触れられるのが大きいですね。 一般的に設計者は店舗を作ったら終わりで、中のオペレーションを見れないし、検証することができません。自社の店舗にかけられる時間が多いからこそ店舗の売り上げや失敗も手に取るようにわかるし、それらを改善することができるのです。

ー樋口さん自身のこだわりについて教えて下さい。

私はデザインするだけではなく、全体のディレクションを担当することもあります。ひとつのお店を作るのに、ものすごく色々な人たちと関わるんですよね。デザイナー、アシスタントだけではなく、家具屋、アクリルデザイナー、スチールデザイナーなど、様々な分野の専門のデザイナーや職人が集まってコラボレーションするということも多くあります。 店作りは関わる人が多ければ多いほど、厚みがあり、愛されるものになります。また、関わる人を通して店が繋がっていくと私は考えています。

そうすることで、プロジェクトはより複雑にはなってしまうのですが、僕自身はそこにこだわりがあって、より多くの人を巻き込んでやっています。 また、最近では建材はカタログから選ぶことも多いと思うんです。防火の問題だったり、予算の問題だったりと様々な条件をクリアしようとすると、どうしても既成建材に頼ってしまいがちです。しかし、そうすると空間のオリジナリティは素材の部分では出せなくなってしまうので、私は材料ひとつとってもカタログから選ばずに自分で探すことにこだわっています。

空間は利便性を追求しただけのものじゃなくて、ひとつの商品

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ー職人さんたちはどのように探していますか?

何か特殊で他と違ったものを作りたいということになったら、それをどうやって作るのか想像して、それを作れる人を探します。よくわからなくても、とりあえずネットで検索してみて、それらしき人がいたら連絡して直接会いに行きます。そこでうまくいけば、その繋がりを次の店舗開発でも生かしていくといった流れです。そうやってネットワークを広げていくと仕事が楽しくなるし、より良いものを作れるようにもなると思います。

ー既存店で好きなものはどこですか?

やっぱり自分で設計した店舗が好きですね(笑)。一番思い入れの強いものは六本木にあるLB6(エルビーシックス)という店舗です。 グローバルダイニングの店は強烈な印象で個性が強く、どれも気に入っています。 空間も商品だと強く言い切っている会社だから、その商品に対する価値や考え方が使えればいいとか、使いやすければ良いというものではないんです。空間は利便性を追求しただけのものじゃなくて、ひとつの商品だという考えが共通していると思います。

「グローバルダイニングのお店って他と違うよね」というものを発信していきたい

グローバルダイニング・樋口氏

ー店舗開発者として今後目指すところを教えて下さい。

会社のこだわりを追求し続ける独自性の高いコンセプトレストランをこれからも作り続けることにつきますね。 「グローバルダイニングのお店って他と違うよね」「見たことないもの作るよね」というものを今後も発信していきたいです。

だからこそ、設計部が内製化されていて、現場の従業員と設計者がマインドを全部共有していることは非常に強みになると思います。そういった現場の声、会社のサービスや変遷・歴史、社長の想いなど、全てを理解した上で店舗づくりを行っていきたいです。

株式会社グローバルダイニング

樋口琢匠 施設管理グループ グループリーダー チーフデザイナー

「コンセプトのある、作り込まれた空間」を創り、「健康的で美味しい料理」を「最高のサーヴィス」とともに提供するグローバルダイニングは、レストランを主とする13ブランド53店舗を国内外で展開。 そこで得られる体験はもはやエンターテイメント。 自社内に設計部兼店舗開発の部署を設け、独自の空間作りに徹底的なこだわりを持つグローバルダイニングでは有能な設計者のみならず、有能な飲食経営者も多数輩出してきた。 そんな「グローバルダイニングDNA」を継ぐ者のひとりとして、今まさに現場と店舗開発を繋ぎ、活躍している。

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